AACA賞2025 美術工芸賞奨励賞|黎明小橋
AACA賞2025 美術工芸賞奨励賞
黎明小橋
黎明小橋は勝どき晴海間にある朝潮運河に架かる人道橋である。
近年大規模な再開発が進み、まちのあり方が変化している中で、近隣住民の生活動線集中の問題を解決するべく、新しい橋の設置で動線を拡散させる必要があった。
動線の改善とともに、まちの一部として船着き場、護岸スペース、橋詰空間が利用しやすいよう一体的に計画することで、まちに組み込まれた、楽しさと親しみのある橋を目指した。
重くなりがちでハードな印象のトラス構造の断面を変化させて波をモチーフにした曲線形状を作り軽やかさと柔らかさを表現した。それにより繊細さと大胆さの両表情の良さをもつ造形的なシンボルとなった。
照明ではカラーグラデーションプログラムを採用し、見るタイミングによって表情が変化する楽しさを演出している。
この場所ならではの橋と屋形船の共演を江戸時代の東京の風景に重ねて作り出す事に注力することで、時代を超えたデザインの魅力に繋げた。

まちに組み込まれた楽しさと親しみのある橋で、水辺へのアクセスの良さとエリアの賑わいを作る
写真撮影 ebi_times

変化する色の照明プログラムを使い、江戸時代の景色のような橋と屋形船の共演を作り出した
写真撮影 ebi_times

重くハードな印象のトラス構造の断面を変化させて波のような形状を作り、軽さと柔らかさを表現
写真撮影 ebi_times
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人道橋は川の中に二つの橋脚を有した全長約85m、中央のスパンが43m、幅が5.92mの直線状の橋である。構造は両側に鋼管で構成したトラスを配し、その間を床版で繋いだシンプルなものであるが、上弦材の面外座屈を拘束するため外側に曲線上の鋼管を配し、それらを繋いで三角形断面とし構造的な安定を確保している。三角形の断面を少しずつ変化させることにより外側の鋼管が水面に波打つような柔らかい曲線の形状がつくりだされ、構造的な安定を保ちつつデザインを生み出している。
もう一つの大きな特徴は照明へのこだわりである。昼は白い塗装によって軽さと柔らかさが表現されているが、夜は橋の内側と外側を照らす照明により奥行きを感じられる効果を生み出し、昼の橋とは異なった姿を見せている。外側の照明は時間と共に色がグラデーションに変化するプログラムによって制御され、橋の夜景の移り変わりが時間の経過を感じさせる。ライトアップされた橋が水面に映り込み、周囲の建築の照明と一体となって揺れ動く様も新たな街の夜景となっている。
土木構造物であるために経済性が強く求められた条件の中でデザインを抑制されることがあったと推察されるが、建築家が強く関わることによりシンボリックな意匠が付加された橋の完成により、利便性の向上だけでなく橋を中心とした新たな景観の創生や周囲の街並みを活性化させることに貢献している。ここで実現した橋は単なる構築物ではなく構造、形態、照明などが一体に融合した工芸品であり美術工芸賞奨励賞にふさわしい。