一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2025 奨励賞make SPACE
AACA賞2025 奨励賞
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1969年以来、香川県を拠点とし地域の情報を伝えるメディア企業の本社屋近傍に建つアネックスの計画です。
施主からのキーワードをもとに、私たちは本社業務からのアジールとして普段出会わない何かと出会う場であると考え1.5プレイス的な役割を担う建築と位置付けました。
敷地は中心街近郊の住宅街にあり、大きな本社屋に対して本作品は、街並みを形成している長屋に調和させた木造2階建で構成しています。変形敷地を利用した幾つかの軸線が微妙に交わらない三角を形成する、9つの多孔質な構造什器とレシプロカル構造の大屋根によって、個々が媒介する都市的な立体空間を意図しました。また樹齢100年の樹木と塀は、この地域にとって大切な風景であることから井水利用を合わせたランドスケープと共存させています。
よって、構造・造園・サイン・照明・インテリア計画から備前焼作家との連携まで、芸術性豊かな空間と文化的景観形成につながる本作品はAACA賞に相応しいと考えます。

作 者:前田 圭介 株式会社UID 代表取締役

所在地:香川県高松市上之町

主要用途:事務所

敷地面積:587.78㎡ 建築面積:295.20㎡ 延床面積:465.37㎡

作品紹介ビデオを観る
多孔質で不均質な耐力壁は異なる床レベルや隣り合うスペースの繋がりから位置を決定した
写真撮影 TOREAL
エントランスへ続くアプローチ。周囲の低層住宅に馴染む木造2階建てとした
写真撮影 TOREAL
三角・六角形のレシプロカル格子梁。大きなクスノキのある敷地に、ポーラスな建築を挿入
写真撮影 UID
選評
高松、栗林公園の近くにあるテレビ局のアネックスである。番組の制作に携わる社員の豊かな感性や創造力を大いに醸成したいという目的を掲げて計画された施設である。敷地は放送局の大きな建物の裏側、周囲は住宅に囲まれた環境にある。塀などはなく、入りやすい。外から見るとどことなく楽しそうな雰囲気を醸し出している。外からも確認できるのだが、一見家具かと思える厚みのある壁が空間を幾つにも分けている。その家具と思しきものが屋根を支える構造体だった。屋根は軽快な木造のレシプロカル構造、全体を覆っていて、いくつもの空間を一つにつなぎ止める存在だ。かなり不思議な構成である。中心といったものは存在せずランダムに少しずつ性格の違う場所がそれとなく繋がっている印象だ。医務室や小さな会議室の存在が、企業の施設であることを気付かせてくれる。
クライアントが求めた施設のありようを、社員が会社の仕事から少し離れることで、通常では出会えないようなモノやコトに出会い、新たな発想を得てゆくための場、だと作者は理解したという。クライアントから投げかけられたいくつかのキーワードを解きほぐすことで、本社のオフィスとは全く違うここでの人の感覚や行為を連想する。それを具体的な空間や素材に変換する作業の過程を経て、全体像を構築していったようである。その中で、家具のような壁やそれに区切られた空間の性格付け等この建築の現在の構成の発想が生まれたと思われる。
別の世界に入る予感を与える入り口、不均質で多孔な棚を持つ家具のような壁、それによって区切られた性格の違う空間、集会の場、飲食の場、和室、指導室、最小限の瞑想空間、工房、等々のバラエティに富んだ空間群。これらは与えられたキーワードから練り上げられた解釈である。実際、早朝にお邪魔したためその使われ方は確認できなかったが、作者が期待する形になるかどうか、ぜひ今後を見たいものである。
ランドスケープを含むこの空間全体のデザインの巧みさは見事で、その居心地のよさには特筆すべきものがあった。
選考委員 可児才介