一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2025 奨励賞新札幌アクティブリンク
AACA賞2025 奨励賞
新札幌アクティブリンク

私たちは100年を超える時間と向き合い、新札幌アクティブリンクを設計した。病院や商業施設を延長176mの楕円の上空通路で繋ぎ、街のシンボルとして不可分の共有物を形づくる。
幅3.5mのモノコック構造で内側は柱をなくし、外周はフィーレンデール構造で合理化。天井と外周部に設備を集約させ、地域住民に開放的で歩いて楽しい歩行体験を提供。全体を楕円に傾けリハビリの歩行負荷とバリアフリーを確保し、それにより生じる部材寸法や角度が異なる複雑形状をコードによる形の定義と幾何形状図で職人に伝え、手仕事とデジタル技術を融合して再現した。溶接一体構造は地震時も安定し、防水不要で維持管理が容易。撓み量を設計計算し模型やモックアップで施工手順を確認、3Dレーザーで架設精度を確保。設計段階からWSや見学会・清掃活動を通じて、市民・事業者と協働し愛着が育まれ、その想いが次代へと繋がる。時を超えこの場に在り続ける象徴的構造物を目指した。

作 者:出口 亮・大成建設株式会社一級建築士事務所・シニアアーキテクト
渡邉 竜一・株式会社ネイ&パートナーズジャパン・代表取締役 / 池邉 慎一郎・プロジェクトアーキテクト
安東 陽子・株式会社安東陽子デザイン・代表取締役

所在地:北海道札幌市厚別区厚別中央

主要用途:道路上空通路

敷地面積:-㎡(道路上空で申請上設定なし)
建築面積:762.81㎡
延床面積:762.81㎡

作品紹介ビデオを観る
開放性の高い明るい空間は時間の移り変わりや季節の変化を感じられる
写真撮影 (株)ロココプロデュース 木本広明
道路上空で敷地境界を越えて医療施設、商業施設、ホテル、集合住宅を円環状につなぐ
写真撮影 (株)ロココプロデュース 木本広明
スチール全溶接によるアクティブリンクは、50年100年の時を超えてまちと人をつなぎ続ける
写真撮影 (株)ロココプロデュース 木本広明
選評
この建物は病院4棟、高層マンション、商業施設、ホテルの6つの敷地と道路区域の7つを接続する楕円形の上空アクセス機能空間であり、それ自体の機能的完成度は利用者の満足度からも高く実現している。
さて、この建物の写真を最初に見た時の私の感想は建築以前に複雑であったろうプログラムを素直に解いて関係各所との整合性を管理したプロジェクトなのだろうという印象が大きく、この空間を支えている鉄板の工芸的工法及び活用法のユニークさには気が付かなかった。外観としては一見素朴で飾り気のない建物という印象で駅近郊の街並みの中でどのように住民たちに受け入れられているか?という方が気になり実物を確かめに現地へ向かったが、そこには写真では感じられないオルタナティブな環境が存在していた。
その空間は職人的な技術者たちによる特殊技術を束ねた実にシンプルで連続的な工法で出現していた。材料は外周ファサードはフィーレンデール構造に納めたガラスと内周の壁面ガラス以外は基本"鉄板"である。鉄板がメインの材料であるが組み合わせて強度を作り造形に生かし外部内部の躯体としても潔く立ち上がっている。この発想は建築の模型をスチレンボードで作る過程そのままに鉄板を構成してみた案なのではないか?とさえ思った。そして工芸的な感性で全体を構成することを選びこれを具体的な建築物へと作り込んだ意志に先ず感心した。
建築家はこんな発想をするのだろうか?構造家はどうだろう?これは都市的なスケールの工芸作品というべき実体である。これをまとめ上げた設計チームは特別な新しさの実現に手応えを感じていただろう。何よりAACA賞の特徴でもある建築/美術/工芸という分野の垣根が程よく混ざり合った良さが備わっている。日本の都市にこのような作品がもっと接続されたら経済主導による都市の風景に一石を投ずるのだろう。
選考委員 松井龍哉