一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2025 芦原義信賞(新人賞)大阪避雷針工業神戸営業所
AACA賞2025 芦原義信賞(新人賞)
大阪避雷針工業神戸営業所

当初は建替え予定だった築35年のRC造4階建ての建物を、設計者からの提案によって、新築では成し得ない価値創出と、躯体寿命が尽きるその先までをデザインの射程として再生させた。
不要部分の減築により建物を大幅に軽量化。これにより、既存躯体からの跳出しだけで木と鉄骨による一体増築を実現した。新たに付加する部材は「経年美化」する素材を選定し、ボルトやビスによる接合を基本としたうえで、それを視覚的に見えるようデザインした。これによりユーザー自身が容易に建築をメンテナンスできるようになり、時とともに建築への愛着が増していき、長く大切に建築をつかってもらう契機とするとともに、将来の解体・分解・部材の再利用も見据えた。
これは「文化財保存」でも「リニューアル」でもない、「第三のストック活用手法」として、膨大なストックを有しながら人口減少していく日本の社会でこそ、新しい豊かさを作り出そうという提案である。

作 者:山崎 篤史 株式会社竹中工務店 チーフアーキテクト
大石 幸奈 株式会社竹中工務店 主任
村上 友規 株式会社竹中工務店 主任

所在地:兵庫県神戸市兵庫区入江通

主要用途:避雷設備を設計・施工する企業の営業所(事務所・倉庫)

敷地面積:660.87㎡
建築面積:235㎡(新築時)→297㎡(25%増築)
延床面積:857㎡(新築時)→471㎡(45%減築)

作品紹介ビデオを観る
10mスパンの既存梁の残る吹抜けを介し、1階共創スペースと2階事務室がつながる
写真撮影 母倉知樹
解体予定だった1989年竣工の4階建ての建物を減築と増築を組み合わせて改修した
写真撮影 ナカサ&パートナーズ
大庇が直達日射と近隣からの視線を遮り、まちの緑と豊かにつながる
写真撮影 大竹央祐
選評
かつては神戸エリアの中心街だったという兵庫区の、今は住宅の多い街。ここに永らく在った既存ビルは解体して新しいものを建ててほしい、というのがクライアントの最初の要望だった。にもかかわらず、作者はそれに対して、既存ビルを減築するリノベーションを提案したという。当時既に不要となっていた4階の社宅部分や一部の床を撤去して建物を軽くする。また以前は2階にもあった部品倉庫を1階に集約する。3階部分の床は、大梁のみを残して撤去、そうすると大きく豊かな事務所空間ができる。等々の提案であった。会社にとっては永らく親しんできた社屋の面影がそのまま残るし、経験したことのない面白い事務所になりそうだ、と承認してもらうことができたとのこと。
4階の住宅や3階の床、2階の床の一部を撤去したことで軽くなり構造的にゆとりができた。そこで北側には道路との隙間に床を増やしそれを、鉄骨と木による斜めの壁状の屋根で覆った。1階ロビーからかつての3階部分までの吹抜けが出来上がりその斜め屋根の全体が見える。思いのほか豊かな空間である。その作り方も面白い。はっきり見えるボルトやビス、鉄骨と木部材の接合部などが、工芸品のように演出されている。床を抜かれて露わになったコンクリートの梁には、かつてそこに在ったスラブや小梁の跡形が意図的に表現されているのも秀逸だ。南側のサービスヤードには北側と同じく、鉄骨と木による斜めの屋根が建物の上部から跳ね出して設置されており、雨に濡れない搬出入の作業空間となった。これらの南北の屋根には近隣からの視線を遮る役目もある。外壁は極力既存のタイルを使用しているという。特に、上部で必要なくなったタイルはそのまま下部の痛んだ部分の補修に使われた。
サインデザインは避雷針にまつわる形を思わせてユニークである。やむを得ず切られた楠はテーブルや手すりになって再生。ところどころにおいてあるプランターもそのおがくずを3Dプリントしたものである。あちこちに垣間見える絵心や遊び心が作者の力量を示しているようだ。
選考委員 可児才介