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協会賞(AACA賞)

第27回 AACA賞

  • 審査総評
      
  • AACA賞
      
  • 優秀賞
      
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  • 奨励賞
      
  • 芦原義信賞
    (新人賞)
審査総評
 審査委員長をお引き受けして2年目となりました。今年も昨年同様多くのベテラン審査員の方々に支えられて、無事に審査を終えることができました。改めて感謝申し上げます。
 応募作品は今年も大変バラエティに富んだものであり、大きな組織が真っ向から取り組んだもの、アトリエ的な作家が信念を持って挑んだもの、長い年月をかけてつくり続けられたもの等々、いつもに増して多様な応募がありました。また、単にアートや工芸と建築との協奏という枠組みを超えて、作者がそれぞれにユニークな方法で独自の作品づくりを模索していることがはっきりと現れていました。そうした中で、経験に裏付けられた本格的な建築でありながら、同時にとても思い切った斬新なアクティブ・ラーニング空間を実現した《近畿大学 ACADAMIC THEATER》が今年のAACA賞に選ばれました。 角度を振って重ね合わされたグリッドが導く、魅力的な街路のような閲覧スペースに大胆に落とし込まれた中庭からの光が満ちて、豊かな活気を生んでいます。
 芦原義信賞には、AACA賞を最後まで競った《ニフコYRP防爆棟・実験棟》が選ばれ、そのデザインにかける並々ならぬ情熱に審査員が感服しました。既存の実験施設などをつなぐ、いわば補助的な施設でありながら、意欲的な構造計画と、巧みな空間配置の妙が相まって見事に芸術的な主役となっています。 この両者に続く優秀賞3作品も三者三様の一筋縄で行かない強い個性があり、何れ劣らぬ力作だと思います。その筆頭が《桐朋学園大学 調布キャンパス一号館》、徹底的にラワンベニアによる荒々しい打放しコンクリート表現にこだわり、力強くまた効果的に組まれた梁のパターンも合わせて、空間に重量感と同時に静かな流動感を生んでいます。同じく優秀賞の《星のや東京》はオフィスと商業が混在する新しい東京大手町の一角に姿を現した、日本をテーマとした旅館です。いわゆる伝統的な「日本旅館」とは趣きが異なりますが、ゲストに心地よい驚きをもたらすアミューズメント性に満ちています。畳や無垢のヒバ材などを始め、質感の協奏が圧巻です。 優秀賞のもう1点は、牡蠣殻を混入してつくられたコンクリートブロックが円筒状に積み上げられた《一華寺無尽塔》で、墓所に併設された礼拝のための施設です。素材に対する飽くなき探求が実を結んだ、建築自体が工芸品のような極めてユニークな作品でした。
 これに対し、特別賞2点《四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト》と《洗足池の家/MONOLITH》は、片や構想以来20年以上の歳月をかけて、一つ一つ地域の人々に呼びかけて紡ぎ出されるようにして生み出された、いく先々でお遍路さんをサポートする小屋を、すべてボランティアによって創り出すという、行為そのものが現代の参加型アート、他方は極限まで突き詰められたディテールによって、飽くまでストイックに建築づくりを行う至高の作品づくりと、まったく正反対の性格を持った作品です。共通するのはいずれもひたすら脱帽させられるというところでしょうか。
 最後に奨励賞1点《特別養護老人ホーム 成仁ハウス100年の里》は、入居者の人間的な視点に立って、共に暮らすことに楽しさを感じさせる平面計画がよく練られており、三階建てでありながら、戸建ての連続を感じさせるような分節のデザインが奏功した佳品です。 今年もこのように真にバラエティに富んだ入賞作品を選出することができ、とてもうれしく思います。来年もさらに期待しています。

選考委員長 古  谷 誠 章

近畿大学 ACADEMIC THEATER
作 者:畠山文聡・岡俊徳・伊藤裕也((株)NTTファシリティーズ)
所在地:大阪府東大阪市小若江3-4-1
審査講評
  大学キャンパスの5棟を一体的に再編計画した建替プロジェクトである。計画地の4つの角に、本部機能の1号館、学外交流拠点の2号館、講義室の3号館、キャンパスアメニティのカフェ4号館が、そして4つの建物の隙間を縫う形で都市的様相の低層の建物群が建てられた。
          
 このプロジェクトの魅力は、建築単体ではなく、この、低層建物群のデザインにある。ここでは、「本」「ACTの活動」「自然」の3種類の空間の繋がりがデザインされた。縦・横4本の帯を10度づつ傾けて編む形状から生まれた曲がりくねった通路は、奥に進むに連れて次々と新しい顔を見せる。 とりわけ魅力的なのは、中庭に囲まれた居心地の良い「本」の空間である。大きなテーブルを囲んでたくさんの学生が各々書物を読んだり、パソコンの画面に見入っていた。 天井までの図書が並ぶ閲覧スペースでは、一つ一つの「本」がアーティスティックに照明されることで、重要な知の素、情報の塊であることが示されていた。近畿大学はクロマグロの完全養殖を実現したことで知られているように、22の「ACTの活動」スペースでは、研究室のテーマ、社会の諸問題の解決につながる成果の創出への取り組みが、透明なガラスを通して外から見えるように展示されている。
 隣接する「自然」溢れる中庭からは、大きく開いた空とキャンパス内の他棟の風景が垣間見える。
 ここには、形を成したアートと呼ばれる物体に代わり、緑溢れる「自然」を取り込んで計画された中庭、知の集積である光を浴びた「本」、未来をより住みやすくする行動を目に見える形で示す「ACT」の展示と、それらを一体的に繋げたデザインがある。露地、禅の教えを示す掛け軸、草庵のしつらえ…この空間が、利休の目指した茶の全体芸術空間に通じていることに思い至った。

選考委員 近田玲子

桐朋学園大学 調布キャンパス1号館
作 者:山梨知彦+羽鳥達也+笹山恭代+石原嘉人((株)日建設計)
所在地:東京都調布市調布ヶ丘1-10
審査講評
 この建築は甲州街道から一歩中に入った武蔵野の気配が残る住宅地の一角に静かに佇んでいる。低層の住宅と近接した墓地と緑豊かな神社を背景に小さな分棟形式で周囲のスケールと程よいリズムで調和する姿は訪れる学生たちを心地よく迎えいれている。荒々しいRC打ち放しの表情の外観を持つ建築に楽器を携えた学生たちが吸い込まれて行く様子に初めは少し不思議な感覚を覚えたが、次第に行き交う学生たちの表情がとても楽しそうにしていることに気付かされる。その印象は内部に入るとさらに増幅される。1階はランダムに配置された細いRCの柱のラウンジ空間で、授業やレッスンを待つ間、楽しげに会話をしていたり、真剣な表情で楽譜を見る学生たちが、生き生きとした様子で寛いでいる。見える範囲を丁寧に調整した開口部からは隣接する墓地の存在は消され、その先の神社の豊かな森の緑が眼に飛び込んでくる。 また敷地の持つ高低差を上手に取り入れ、高さの異なる大小のレッスン室の平面と断面の組み合わせで、レベル差も含め多様な空間を持つ構成が生み出されている。
  
 それぞれのレッスン室を離すことで音の緩衝を避けているが、それによって生まれた自然光と景色をもたらす隙間が豊かな回廊空間をつくり出している。レッスン室はガラス張りで廊下から中の様子が垣間見られ、かすかに音が聞こえてくる。そこには中廊下型の機能的なレッスン室の単調な牢獄のような空間は存在しない。2階は中央に中庭があり、ランダムな部屋の配置から生まれたT字に組み合わされた梁が心地よいリズムを持つ外部空間をつくり出しており、この計画を支える構造と意匠の絶妙な調和が複雑な構成の建築をより豊にしていることに気付かされる。
 改めて全体を見直してみると、600mm幅のベニヤ型枠の打ち放しで処理をしていない荒々しい質感の外観で構成され、これまでの音楽大学の持つ印象とは少し離れていると感じるくらい素っ気ないが、むしろクリエイティブな創造環境に相応しい姿に見えてくる。周到に計画された総合的プロポーションの追求によって、限られた予算を感じさせない美しい建築を実現した設計者の力量は特筆すべきものであり、AACA優秀賞に相応しい作品である。

選考委員 堀越英嗣

星のや東京
作 者:(株)三菱地所設計 林総一郎 
    東環境・建築研究所 東利恵
    (株)NTTファシリティーズ 一法師 淳 
所在地:東京都(株)NTTファシリティーズ 一法師 淳 
審査講評
  東京の中心の大手町に『連鎖型都市再生プロジェクト』の一環として建てられた「日本旅館」で、林立する超高層オフィスビルに囲まれて、角丸の重箱を重ねたような18階建ての外観は、伝統的な江戸小紋の鋳物スクリーンをまとって建っている。ビジネスや観光で訪れる海外からの客に、日本の文化を伝えることをコンセプトにしていることは、一目で伝わるしっとりとした落ち着きのある佇まいである。入り口を入ると、天井高5Mの細長い空間が迎えてくれる。大きな左官壁と栗の木の透かし模様の対面壁は下足箱であり、全ての客はここで靴を脱ぐ。1階のエントランス、2階のレセプション、3階の免震層から上層がラウンジ付きの客室階が、最上階に浴室露店風呂などのフロアーが積層されている。内装の様々な工夫により、宿泊客は、滞在中はそれら素材を通して五感を刺激される体感を覚える仕掛けが満載である。沓脱ぎの瞬間から、畳の床を歩くという体験は、もはや日本人でも新鮮である。この足裏の感触は、EVから廊下、客室全てに途切れなく敷き込まれ、日本ならではの作法をとおして身体に直に作用する経験をすることになる。 床仕上げに限らず内装や家具調度にも、いろいろな日本の素材が使われている。桐や栗、竹などその特徴を生かした新しいデザインに職人技術が遺憾なく発揮され、レストラン階では、地層を表す左官壁や作為のないフォルムの淡路石が点在して、日本的な凜とした静寂の庭園造形を彷彿とさせる空間となっている。
 構えた美術作品を飾り並べるのではなく、都市計画から建築、内装、家具、調度備品まで、運営ソフト、設計、施工の協労を重ねてきた星のやチームによって、一連の連携が蜜実に繋がり高まって「星のや東京」ができた。
 日本の建築美術工芸が一体となった日本の宿泊施設の新しい姿といえ、AACA優秀賞に相応しい作品である。

選考委員 藤江和子

一華寺 無尽塔
作 者:宮森洋一郎(宮森洋一郎建築設計室)
所在地:広島県呉市西中央5-7-1
審査講評
 巨大戦艦(大和)が残したメッセージを包んだ「大和ミュージアム」を背に、呉の街を上った傾斜の住宅地にこのお寺は在る。時に迷惑施設のように扱われがちなお墓を、周辺の人達に気持ち良く受け入れられる場所にしたいとの住職の思いは強かったという。
 「無尽塔」は共同のお墓。土に還ったお骨がこの周辺に植えられた樹々に花や実をつける。その花はお墓に供えられ、実は鳥がついばんで新たな命を運ぶ。そのような命の循環の場所となることが計画された。直径4m、高さ5m程の穏やかな切頂円錐形態はインドの遺構からのイメージという。頂部の円盤に明けられた孔からは自然光がさしこみ、中央の仏塔に落ちた雨水は地下に浸透していくしくみだ。
 塔の構造形式は組積造ドームの原点ともいうべき「持送り構造」。始原的なミケナイのアトレウス宝庫とローマ・パンテオンとをミックスしたような構造空間である。小さな手作りのブロックは陶石と呉市ゆかりの牡蠣殻を凝固剤(マグエン)で自然乾燥したもの。何十回もの強度試験を経て配合が決められた。4種類、1200個の組積材の組合せと目地幅の調整によって、ドーム型のジオメトリーが巧みに実現されている。 多くの人々の参加によって永い時間に耐えられるような自由で開放的な空間・場所は心温まるアートと感じられた。

選考委員 斎藤公男

四国八十八ヶ所ヘンロ小屋 プロジェクト
作 者:歌 一洋建築研究所 歌 一洋
所在地:四国四県 各所
審査講評
  四国八十八ケ所の札所巡りに毎年多くの人々がそれぞれの願いを込めて行を行っている。
 以前は各寺院や路々の農家等が好意をもってお遍路巡りの人々に軒先を貸し、休憩接待等を行う習慣が根づいていた。 近年 時代の変化と共にその様な慣行が薄れ、八十八寺院間のネットワークも薄く、農家の建築様式も近代化されて軒先で接待を行う場もなくなり、お遍路の人々にとってその路々で休憩する場を探すことも困難な状況になってきた。
 そんな状況とお遍路の伝統の行く末を憂えた地元出身の一人の建築家が、お遍路道の途中に休憩接待所を88ケ所設置し、お遍路道をネットワークするプロジェクトを立ち上げた。
 各地域の有志を募って土地の提供者を求め、寄附や資材の提供を求め、全てをボランティアでこのプロジェクトを遂行することとなった。
 土地は、畑や田んぼの中や町なかの広場や幹線道路の側わりであったり、緑深い山林の中であったり、様々な情景の中に立地している。 その場所の由来や周辺の環境の中から物語性を紡ぎだして、様々な形状の休憩施設をデザインした。
 全て木加工による素朴な構造で、地域の住民がその建設作業に積極的に参加して手作りで完成させ、その後の維持管理を行うことで新たな地域コミュニティーの形成にも寄与している。
 形態は様々で、建築ともモニュメントとも彫刻とも言えるような不思議な造形物がその風景の中で存在感を発揮している。
 まさに、地域の中に新たな景観を創り出し地域コミュニティーを活性化させるというAACAの理念にふさわしい作品であり、単体の建築や造形物が対象ではなく88ケ所のネットワークづくりと地域の人々の積極的な参加によるコミュニティーづくりが特別賞として高く評価された。
 現在88ケ所の内、55ケ所が15年の年月をかけて完成している、残り33ケ所が多くの人々の共感を得て早く完成することを祈りたい。

選考委員 岡本 賢

洗足池の家/MONOLITH
作 者:城戸崎博孝
所在地:東京都大田区南千束1-27-3
審査講評
 洗足池の小高い丘にそって並ぶ閑静な住宅街の中にその家がある。建物の半分を地下に沈め、地区の景観条例にあわせている。概観は水平に延びた階層を、ダークグレーの壁に覆われた建物だ。
 建築に極限まで研ぎ澄まされた空間を求め、構想の原点に映画「2001年宇宙の旅」にでてくるMonolithをあげて、一枚岩のモニュメンタルなものをイメージしたと設計者は述べている。一連のストーリーをもつ建築の進め方がおもしろいと思った。
 建築素材は石、鋼板、ガラスの三素材を厳選し、床仕上げは黒御影石、外壁は溶融亜鉛リン酸処理鋼板を使用している。
 直線的な玄関を登ると、広いテラスに出た、黒の石張りの奥に一体の彫刻があった。
 ステンレスで有機的な抽象彫刻が、その場の空間を際立たせていた。
 イマジネーションを追求するとともに建築そのものの美しさを求め、繊細なディテーリングを随所に試みている。「緊張感のある空間の中に品格のある遊び心の芳香が漂う小宇宙を生みだしてみたい」と、この建物を巡りながら何か、人の気配のない冷たい空間が、私には気掛かりであったが、建築施工の早い段階からアートが考えられた住宅は稀な事と思う。
 内部のコーナーには良質な古美術や木彫がコレクションされ、暖かみと優しさを称えていた。
 この建物は人間が住んでみてさらに魅力的になるだろうと思う。
 孤高の建築を求める姿勢を保ちながら、並並ならぬこだわりを私は感じた。
 AACA賞選考経緯の中で、濃密な細部の意匠により、熟達した高度の建造技術の育成も重要な面であり、その寄与するところ大であろう、その設計姿勢に対し特別賞として評価する。

選考委員 米林雄一

特別養護老人ホーム 成仁ハウス 百年の里
作 者:(株)内藤将俊建築設計事務所 内藤将俊
    (株)佐藤総合計画 前見文武
所在地:岩手県大船渡市立根町字宮田9-1
審査講評
 新幹線の一ノ関駅からレンタカーを駆っておよそ1時間40分、峠をいくつも越えて陸前高田で太平洋を見る。現在も復興は道半ばといったところか。大船渡の街に入ると袋状になった大船渡湾に沿って北上する。 盛川の河口から約4キロほど北に上ったところがこの作品の敷地だ。施設に面した川の対岸から見るととても目立つ。真っ白な壁に楽しげに穿たれた開口を持つ、形の単位をいくつも集合させ、伸びやかな全体の姿ができている。鄙びた谷あいの街に新しい風景が現れた。
 今後の老人ホームのプロトタイプを創るため、ユニットケア型のさらに新しい在り方を目指して挑戦したプロジェクトである。 様々な、あれもこれもと工夫を徹底的に凝らしている中で、最も印象深いのが、入居者一人一人の個性や生活のリズムを尊重した、顔なじみの介護スタッフによる個別ケアの在り方だった。
 一つのユニットでは10~11人が生活する。トイレが付いた「完全個室」、他の居住者や介護スタッフと交流する「共同生活室」、それに浴室等の「衛生エリア」から成り立っている。共同生活室は「だんらんの居間」「仕事スペース」「台所」に分かれているのだが、それぞれの空間の境には壁等の仕切るものは一切なく、切妻型の天井の向きによってうまく区切られているのが興味深い。
 このユニットはちょうど「むら」のような場所で、これがフロアに4つある。フロアの全体を「まち」と考えて中央に広場状の空間を置くというユニークな発想で、通常は長くなって床面積を大きくさせてしまう廊下を、なくしたことが特徴だ。
 またすべての個室において窓から互いが見合うことはなく、眺望が豊かで、日光や通風も確保されている。 個室群は雁行型、全体は十字形の平面という計画がその効果を高めた。10mの高さ制限の中、天井の形状に変化を持たせることで、入居者に場所認識を高めさせると同時に、梁型をかわしたり設備用の空間をうまく確保することが可能になった。 少ない素材を変化のある使い方をすることで、あたかも豊かな装飾があるように感じさせてくれる。 施設の運営者と手を携えて作り上げた、新しいタイプの老人ホームである。

選考委員 可児才介

ニフコYRP防爆棟・実験棟
作 者:(株)竹中工務店 越野達也
    テキスタルデザイン:森山茜
所在地:神奈川県横須賀市光の丘2568-5
審査講評
 この計画は横須賀にあるリサーチパーク内に位置し、自動車のプラスチックファスナーなどを 製造する大手部品メーカー「株式会社 ニフコ」の実験施設である。既存の本社棟と技術開発センター棟との間に実験棟・防爆棟を配置し、これら3施設を結ぶ動線上に「風のプロムナード」と称する実験棟のエントランスエリアを設けている。 海から吹く卓越風を意識した緩やかにウェーブする一枚の長大な大屋根、これを中央にあるリニアに連続するRC大壁のみで支えるという大胆な発想の「ヤジロベエ」構造とフレームレスのガラススクリーンというとてもシンプルな建築構成で開放的でありながらも穏やかで豊かな空間を創り上げている。 柱のない外部空間やウェーブする軒の高さや軒の出、室内と中庭の関係・中庭の奥行などスケール感が心地よい。さらには建物沿いにある連続した水景が周囲の豊かな自然や空を写し込み、水景から風の揺らぎをとらえた反射光がウェーブした軒や壁に映し出されることで、この場の心地よさを増幅させている。
 また、ウェーブする軒を特徴づける仕上げは目地の少ない左官仕上げとすることや中央のRC壁を新規開発の超低収縮コンクリートを使い、誘発目地のないプレーンな壁面とすることなどきめ細やかな高い技術力も見逃せない。 光源を見せない中央RC壁上のライン照明や室内の両端部にある森山氏デザインのファブリックアートも一体となって豊かな建築空間を作り上げている。
 この計画の意図である、両サイドに位置する既存棟から研究者や社員が行き来するなかでの「交流」の場、「休息」や「思考」の場が実に巧みに実現されている優れた建築でありAACA新人賞に相応しい作品である。     

選考委員 東條隆郎

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