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AACA賞

第11回 芦原義信賞

  • 芦原義信賞
  • 優秀賞
  • 優秀賞
神戸国際中学校・高等学校 河野記念 アルモニホール

撮影:稲住泰広

撮影:母倉知樹

撮影:母倉知樹

作 者:(株)竹中工務店 大阪本店設計部、福垣哲朗・中西正佳
審査講評

 明石海峡や淡路島をのぞむ須磨の丘陵地に位置するキャンパスは、背後に里山を背負う自然環境に恵まれた敷地である。 既存の校舎群はコンクリート打放しのマッシブな正方形と円形によって幾何学的に構成されている。
 それらは周辺の自然環境とは対比的なデザインである。 今回計画された体育館は既存キャンパスとの連携とデザイン的調和に配慮しながらも、豊かな自然環境との三次元的融合を図っている。
 北側の里山から南側に傾斜する片流れの大屋根は、外壁の上部をガラスにして山の斜面に沿って浮遊するような、軽快かつ自然と調和したデザインとなっている。
 また長大スパン20mの木架構によって構成された室内は三層に分けられた北側壁面の上下の開口部から里山の豊かな自然を見ることが出来る。
 時々の光の変化と四季の移り変わりを感じる気持ちの良い空間となっている。 さらに床面から高さ1.9mの開口部は里山から室内を通り抜ける自然の風が心地よく、広場との連続性と一体感を増幅させている。
 その広場のランドスケープは現存する植生をもちいて視覚的に里山と一体となった連続性のあるものにしている。シンプルな木架構による空間構成と自然との融合を主コンセプトにしたデザインは日本建築の特色である自然との共生と伝統美を感じさせる建築となっている。教育の場として良質な空間が実現できたと評価できる。

選考委員 岩井光男

旧廣盛酒造所再生計画

撮影:全点 広川智基

作 者:(株)TYRANT 松葉邦彦、寺戸巽海構造計画工房 寺戸巽海、
    福島慶介(N合同会社)、群馬県中之条町
審査講評

 この作品が処女作である設計者には、まさに新人賞としての芦原義信賞が相応しい。
 使われなくなった廣盛酒造所を中之条町が買い上げ、まちを上げて二年に一度開催される中之条ビエンナーレの拠点として位置づけられ、祭りのための収蔵庫の新築や既存の酒蔵を改修して展示空間を創り出されている。
 建築の完成度という意味では稚拙なところも見られるが、街づくり、街おこしにしっかりと貢献している点はなかなかの優れものと言う事が出来る。
 中之条ビエンナーレは人口1万8000人の街に何万人もが集まるアートイベントとして成功していると言えるし、参加アーティストの作品も質の高いものであり、建築家とアーティストが地域の人々と共に協力して、多くの人々を巻き込んで街おこしを推進している。
 このケースは建築家やアーティストが社会に関わっていく事の新しい可能性を示しており、こうしたコラボレーションの場づくりに向けた努力が個々の地域や作家達に今日求められているように思う。

選考委員長 芦原太郎

SIA豊洲プライムスクエア
-ひとつのかたちと ひとつのしくみから 多様な表情-

撮影:島尾 望(エスエス東京)

撮影:島尾 望(エスエス東京)

作 者:清水建設+フィールドフォー・デザインオフィス、設計:清水建設(株) 牧住敏幸、
    構造:清水建設(株) 大藤大介、設備:清水建設(株) 池田真哉、
    フィールドフォー・デザインオフィス 代田哲也
審査講評

 近年様々なプロジェクトが展開され発展が著しい豊洲地区に建設されたオフィスビルである。
 ほぼ正方形の平面型の中央にセンターコアを配した、極めてシンプルな構成のオフィスプランで、さまざまな大きさのテナント対応を計画している。
 アプローチからエントランスホールへは吹抜の開放的な空間が計画されその大壁面に本賞の対象となる壁面デザインが計画された。
 一つの押出型で製作された不等辺三角形のテラコッタと、一種類の特注金物で高9m巾50mの大壁面を、様々な表情を持つ魅力的な空間を極めて安価な手法で実現してみせた。
 テラコッタは下部から上部にいくに従って、長さを増し各々のピースの角度を微妙に変化させ、ライトアップの効果を巧みに利用してダイナミックでかつ繊細な表情を見せている。
 外部から入る太陽光の変化や四季の自然な光の変化に対応し、又人々の動きによる視線の変化も加えて常に変化する楽しさを与えてくれる。
 テラコッタという自然素材の柔らかさが相まって人々に安らぎをも与えてくれる。
 施工精度の厳しさや大量な均質を素材の製作等、この作品に取り組んだ人々の熱意が感じられる。建築の他のディテールにも様々な工夫が施され、かつ周辺の環境に対応させる為、各面で異なったファサードデザインを展開させる等、建築全体も質の高い作品に仕上がっている。
 若い担当者とデザイナーの共同による優れた作品として芦原義信賞にふさわしいと評価された。

選考委員 岡本 賢