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AACA賞

第31回 AACA賞

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    総評
  • AACA賞
     
  • 芦原義信賞
    (新人賞)
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審査総評

昨年に引き続きコロナ禍での審査となりましたが、一次審査は審査員が集まっての作品パネルによる選考、現地審査は審査員の人数を絞って実行し、公開による最終審査は応募者と審査員が一堂に会しての審査を終えることができました。なお、海外の審査員や体調などにより直接参加の難しかった審査員、応募者についてはWEBによる審査も並行する、オンライン、オフラインのハイブリッドの選考会とすることで、一人も欠かさず参加をいただくことができました。応募者各位をはじめ、準備に当たられた皆様にこの場を借りて改めてお礼を申し上げます。
 今年も大変数多くの応募をいただき、また内容も多岐にわたる作品が集まりました。それだけに審査は時に難航しましたが、結果としてはAACA賞審査にふさわしいバラエティに富んだ審査会とすることができ、また力のこもった入賞作品を選出することができたと思います。
そうした中で、圧倒的多数の審査員の推薦により今年のAACA賞に選出されたのは、既存の信濃美術館を建て替えた《長野県立美術館》で、隣接する東山魁夷館と共に善光寺に隣接する公園内に、その地形の変化や周囲の環境との緻密な応答により構想された、建築の枠を超えて一帯のランドスケープを統合する素晴らしい作品です。
気鋭の新人に贈られる芦原義信賞には、斬新な三層のツリー状の木架構によって浮遊感と高揚感を生み出した《Agri Chapel》が選出され、まさに工芸品的な美しさを持つものとして、一次投票では長野県立美術館とともに審査員全員の投票を得るなど、極めて高い評価を得ました。
この両者に続く優秀賞もいずれも創意と魅力に溢れた《那須塩原市立図書館みるる》《A&A LIAM FUJI》の2作品に決まりました。前者はJR黒磯駅直近に建つ公共図書館で、駅前広場や周辺の街並みに続く開放感に溢れ、誰にでも親しみやすく、いつも多くの人々に使われています。また、特に2階部分の伸びやかな天井の造形は、一体感のある大らかさと無数のルーバーが緻密に割り付けられた周到なもので感服させられます。後者は宿泊施設であり、三層の田の字のCLT構造が互いにずれながら積層し、ダイナミックな重層空間を生み出しています。ここに宿泊する体験は、さながら巨大なアート作品の内部に泊まる非日常感を味わえるものです。
これに対し、特別賞2点《有明体操競技場》と《葉山加地邸》は極めて個性的かつ対照的な2作品で、片やオリンピック・パラリンピック施設として仮設的に使用され、今後は転用される予定の競技場であり、他方はフランク・ロイド・ライトの日本における筆頭の弟子である遠藤新設計の旧宅の宿泊施設へのリノベーション作品です。前者が、従来の競技場にはない、思い切った木の利用によるダイナミックで、かつ繊細な表情を併せ持つ作品で、また競技場のボリュームを軽やかに持ち上げて解放感を持たせた極めて秀逸な建築表現となっていました。
一方後者は葉山の自動車の寄りつけない斜面の上にあり、その分海の眺望の素晴らしい立地に、かつて邸宅として建てられた造りをそのまま生かして、宿泊可能な空間として現代に蘇らせたものです。遠藤新の空間を将来にわたって体験可能なものとして再生した意義は絶大なものです。
今年の奨励賞としては、以下の5作品が選ばれました。
まず《早稲田大学本庄高等学院体育館》は、普通なら大きな開口を取りながらややもすればカーテンが引かれがちな高校体育館に対して、全体をコンクリートの角丸のボックスで造り、そこに適宜丸窓を散在させる手法で体育館とは思われない外観を実現し、かつ内部にはやわらかい灯りを取り入れる意欲的な試みです。《古家増築UPサイクル》は異様に細長い敷地の中で既存の住戸を包み込むような増築を行うという離れ業がユニークです。千葉大学の門前に建つ《ZOZO本社屋》は、オフィスをバックアップする種々の機能を地域に既存の店舗などを活用してまちと一体化する新しいオフィスの試みであり、《三栄建設鉄構事業本部新事務所》はボロノイ図形を立体化した鉄骨架構による空間が目を引く、鉄鋼関連の社員が働きがいを感じる事務所と言えます。残る1点の《地域に潜む文化と出会えるホテル》は那覇市内の大通りに面するビジネスホテルですが、リゾート目的やワーケーションに配慮して客室等に居心地をよくする工夫が溢れており、一味違う滞在を楽しめるものになっています。
最後に美術工芸賞は《能作新社屋・新工場》、錫の鋳造の鋳型をそのまま見せる収納庫が、それ自体が美術工芸品のような美しさを持ち、また同奨励賞に選ばれた《METALISM》は町工場の生み出す製品の魅力や可能性をアピールする大変意欲的な試みでした。
あいにくそれぞれを詳しく述べる紙幅がありませんが、今年もこのようにバラエティに富んだ多くの入賞作品を選出することができ、審査委員長としてとてもうれしく思います。

選考委員長 古 谷 誠 章

長野県立美術館

写真撮影 北嶋俊治

写真撮影 北嶋俊治

写真撮影 走出直道 / ㈱エスエス

作 者: 宮崎 浩 ㈱プランツアソシエイツ
所在地: 長野県長野市箱清水
審査講評
 この美術館は善光寺の東側にある城山公園内に、プロポーザルにより選定された作品である。建物は約10メートルの高低差のある善光寺に面した斜面に埋め込まれるように配置されている。敷地の東側の一番高いレベルに3階のエントランスがあり、その前の車寄せから美術館が平屋建てのように見え、ボリュームを感じさせない。内側に檜のルーバーで覆われた大きな庇とその前面に西側に大きく開いた伸びやかな屋上広場があり、その広場の水平線上の視線の先に、緑の山並みを背景としてボリュームのある緑の中に佇む善光寺が見える。屋上広場の西・北川外周部が傾斜のある「草屋根」となっており、周囲の景観との一体感・つながりが感じられる。とても落ち着きのある美しい空間・景観であり、美術館にいることを忘れてしまうような設えである。
北側にある谷口吉生氏設計「東山魁夷館」との間に、敷地の高低差を巧みに利用した東西を上下に抜ける空間があり、その斜面に沿って水景が創られている。この空間は林昌二氏設計「旧信濃美術館」が建っていた場所である。この跡地が空地として視線が抜けることや、自由に行き来できるパブリックな空間であること、さらに、水景の中間にあるデッキ「水辺テラス」や中谷芙二子氏の「霧の彫刻」が存在することで、動的で魅力的な空間となっている。また、この特徴的な「抜け」空間の存在が「東山魁夷館」と対峙するのではなく、時間の隔たりを超えて両者の共存を自然なものとしているように思える。
美術館内部はこの水景を持つ高低差のある抜け空間に沿って、エントランス、展示室前のホワイエ空間、ミュージアムショップ、アートライブラリーなどの施設が配され、しかも展示室以外は自由に出入りすることができるパブリックな連続した空間となっている。そのつながり具合やボリューム感も心地よい。さらには外部の水景や公園の広がり、その場に集う人々の様子や遠方に見える山並みなどの周囲の景観との一体感が感じられる設えである。実に巧みな構成であり、大変心地よい空間である。自分の居場所が自然に理解できることもその心地よさを感じさせる所以であろう。
設計者は、この美術館は風景に突出することなくランドスケープと建築の一体化を図った「ランドスケープミュージアム」であると表現している。確かに美術館全体が「東山魁夷館」とともに従前からこの周囲の景観とともに存在してしたかのようにも思え、今後、多くの人々に親しみをもって利用されることが期待される美術館である。設計者の意図を十分感じることができるAACA賞にふさわしい作品である。

選考委員 東條隆郎

Agri Chapel

写真撮影 針金写真事務所


作 者: 百枝 優
所在地: 長崎県長崎市四杖町
審査講評
既存のホテル施設に新たな結婚式用のチャペルを計画して完成した建築である。チャペルの直接のアプローチは数メートル下方から仰ぎ見る形となり、まずその正方形の形態がシンボル的な存在となって美しく感じられる。立地は長崎の海を見渡す高台に位置していて、周辺は環境にも恵まれている。
ガラスと壁面で構成された立方体の内部空間の構成は今まで見た事がない空間が広がっている。構造体そのものが空間彫刻の様でもあり、極めて装飾性に富んでいる。フラクタル幾何学に興味を持つという設計者の意図によって構成された内部空間は、木造の樹状ユニットを3層構成で重ね合わせて上方にいくほどに√2の比率で縮小し平面的に45度回転させた結果、木造ゴシック様式をイメージさせながら再に森の中に佇んでいるような静けさや、多くの花々が咲きほこっている華やかさを感じさせる不思議な空間が出来上がった。
樹木ユニットは複雑にからみあいタイロッドによって引っ張り合って互いを支えて構造柱となっている。水平力は周囲の壁面で受けて、その分構造柱は繊細な断面で可能になっている。
この解決が美しい構造空間を可能にしている。樹林を通してガラス越しに遥かに長崎の海を見る情景もまた素晴らしく、ここで行われる結婚式の晴れやかな式典は参列者の記憶に残るだろう。夜になると木構造の樹林がガラス面に無限に映り込んで幻想的なイメージに変わっていく。建築とも立体構造作品とも言える様な美しい作品である。設計者は従来はインテリアデザイン等が多く本格的な建築はこの作品が始めてだという。
第1作品にかけた意欲と発想の豊かさとそれを実現させる実行力も高く評価したい。華麗な空間に身を置いた時の感動をひさびさに覚えた。芦原義信賞新人賞のふさわしい名作である。

選考委員 岡本 賢

那須塩原市図書館 みるる

写真撮影 DAICH ANO

作 者: 一級建築士事務所 UAO株式会社
所在地: 栃木県那須塩原市本町
作品説明ビデオはこちらから
審査講評
近年、公共の図書館が純粋な図書機能を持つだけでなく、様々なイベントの開催など人が集まる交流機能も併せて持つ図書館が見受けられる。那須塩原市図書館「みるる」は、人が集まる機能に加え、さらにこの場から街へと新な流れが自然と生まれることを意図した施設である。この図書館は黒磯駅の広場に面し建てられている。そのファサードの全面ガラススクリーンが大きく開かれ、そのガラススクリーンの上に木製ルーバー状の軒天井を持つ多面体の屋根が軽快に存在している。このルーバー状の軒天井はそのままの形で内部の天井に続いている
エントランスに入ると二階まで抜けるホールがある。エントランスに対し「ハの字型」に開かれた両側の壁に配置された5mを超える高さの木製の書棚と、2階に通じる緩やかに弧を描いた階段が、来館者を自然と迎え入れてくれているようだ。2階の外部から続く木製ルーバー製の多面体で構成された天井がさらに奥へと軽快に続き、木の肌の色合いとリズミカルなルーバーが気持ちを和ませる。
一階には「みるるAve.」という「通り道」がある。黒磯駅と市街地とを結びつける人の流れを想定したパブリックな空間として設定されている。「通り道」から外部ガラススクリーンに向かって天井までフレームだけの書棚が放射状に配置されている。外からガラススクリーン越しに館内部の様子や人の動き・活動が手に取るように見え、街に対し開くというイメージが伝わってくる。また、ガラススクリーン沿いに「森のポケット」と呼ばれる多様な使われ方を想定した吹き抜け空間が点在し、その場にたたずむと二階天井の多面体木製ルーバーが垣間見える。大きなガラススクリーンから溢れんばかりの外光が降り注ぐとても明るく快適である。書棚1段の高さは通常より一回り大きく設えられ、フレームと本の間にゆとりがあり、遠くまで見渡せる。開放的でありながらも書棚と書棚の程よい「囲われ感」も心地よい。「通り道」からだけでなく、どこにいても読書をしている様子や市民による様々な活動が垣間見え、本を媒体にヒト・モノ・コトの自然な交流が生まれてくるように思える。
二階は図書スペース、学習スペースなどがあり静的な空間である。天井の木製多面体ルーバーが大変美しく芸術的でもある。木製の書棚が低く抑えられ外周のガラススクリーンから柔らかな光が降り注ぎ落ち着いた心地よい空間である。
西側の道路側は駅側からルーバー状の軒の折れ屋根庇と屏風状に折れた大きなガラススクリーンがリズミカルに続き、前面の歩道状の広がりの中の縁側や植栽の設えが街に開かれたイメージを創り出している。
この「みるる」は内外共に大変魅力的な計画である。この新たなチャレンジ、建築や景観の有り様が、人を育み街の価値を高めることにつながると大いに期待できる作品である。

選考委員 東條隆郎

A&A LIAM FUJI

写真撮影 鈴木研一

作 者: 建築 MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO、アート Liam Gillcik
所在地: 岡山県岡山市北区天神町
審査講評
不思議な作品だ。3層の建物なのだが同じ層の中、田の字に区切られたそれぞれの部分に対しては移動できる開口がない。微妙にずらして配置された田の字の縦の隙間が上下の移動経路になり、吹き抜け等を通して空間がつながる。歩き回るうちに空間の構成が迷路化して、自分の居場所の座標がわからなくなる。なんでそうなのか、説明を聞くうちにさらにわからなくなる。でも構成はかなり単純である。210㎜厚で2.6mの高さのCLTの板を6枚組み合わせて田の字状に組み、これを三段、少しづつずらして重ねたものである。2階の玄関がある田の字の区画の一つに入ると上下への階段が目に入る。下へ降りるとリビングの部屋になる。そこからもう一つの階段で上に上がると、キッチンに至る。そこの別の階段を下ると下に浴室が見える。ともかく歩いていて、なんでそうなるのか不思議で仕方がない。三層の田の字を少しずらしたというのが実はミソのようだ。
作者の弁では通常「ホテルは旅の中にある」のだが、このホテルは「旅を内包する」という。アートによる街づくり運動の「岡山芸術交流」と連動して岡山の日常にアートを仕込むという企ての一環で創られたホテルである。田の字構造を微妙にずらすことによって生まれる上下の接続が、動線だけではなく空間のつながりも創りだし、最上階から取り入れた天空光が1階にまであふれる。まさにアートの空間だ。
一方、CLTの組み立てにはかなり精緻な技術が使われている。作者の豊かな経験と知恵がふんだんに盛り込まれていて、伝統的な嵌め合わせの手法に最新の金物技術を加えて強靭な「田の字」の構造体が出来上がった。
設備的な温熱環境の工夫はもちろんのこと、地球環境に対しても鋭い感覚が示されている。協働するアーティストが作り出したという巨大な文字列が外壁に取り付けられているが、これは折しもノーベル賞を受賞した、日系人科学者真鍋淑郎の創りだした温暖化を示す数式であり、これを通じて地球環境の危機を訴えたいというメッセージになっている。
きわめてユニークで、衝撃的で、建築自体がアートになっている優れた作品である。

選考委員 可児才介

三栄建設 鉄構事業本部新事務所

写真撮影 母倉知樹

作 者: 株式会社 竹中工務店 大阪本店
    (建築)小幡剛也、瀬山充博、田中盛志
    (構造)大野正人、内山元希
    (設備)世利公一、小玉直史
所在地: 大阪府大阪市大正区南恩加島
三栄建設 鉄構事業本部新事務所は、建築主の思い、設計者のデジタルの設計技術、鉄鋼職人の手の3者によって実現化した。
建築主は、横幅93.5m、奥行22.1m、高さ13.5mの細長いこの建物を鉄骨ファブリケーターである会社の「鉄のショールーム」と捉え、複雑な角度の溶接が求められる鉄骨の構造体を可能な限り鉄で作ることで高い技術を示すと同時に、従業員にとって魅力ある働き場所にした。
設計者は、自然界に存在する泡がある領域に充填されて拮抗した状態で出来る幾何学的形態・3次元のボロノイ分割を使い、ボロノイの最大限のボリュームを獲得しようとする性質をコンピューテーショナルデザインなどの最新技術を使って空間設計に応用し、さまざまな職能の人々の従属関係のない風通しの良い繋がりを生む3層オフィスを作り出した。
鉄鋼職人たちは、柱、梁、耐震壁、スラブ、高い溶接技術が求められる複雑な鉄骨架構の設計図を基に、新しい仕口の検討、梁先行の鉄骨建て方、部材の大型化による精度確保など、通常の技術では作ることができない建築を職人技によって実現して自分たちの誇りに繋げた。
職人技によって複雑な角度で溶接された鉄骨架構そのものがアート作品とも言えるが、エントランスホールの受付カウンターを見て驚いた。黒く塗装された直径318.5mmの鋼管材4本を複雑な角度で溶接した何ともダイナミックなオブジェなのである。一次審査で見た作品パネルには、このようなオブジェの存在は記載されていなかった。聞けば、建物の溶接試作を受付カウンターに利用したとのこと。分厚い黒い鉄の管が見る者に迫ってくる。AACA賞は、建築、美術、工芸が融合した芸術的景観を対象としていることから、応募者には、こうしたオブジェを積極的にアート作品として取り上げる意識が望まれる。

選考委員 近田令子

ZOZO 本社屋

写真撮影 藤井浩司

作 者: 中村拓志 NAP 建築設計事務所/中村拓志、高井壮一朗、鈴木健史
    株式会社 竹中工務店/成山由典、鈴木宏彬、齋藤悠磨
所在地: 千葉県千葉市稲毛区緑
審査講評

各駅停車の電車しか止まらない総武線の西千葉駅は千葉駅の一駅手前にある。駅を出て少し歩くと周辺はほぼ住宅街と言っていい、静かな街並みである。線路沿いエリアを除くと殆どの建物が2階建、高くても3階建である。そんな環境の中にこの作品がある。人気のファッション企業の本社がなぜ住宅街にあるのか、一見不思議な気もするが、その街に溶け込み、町との関係性を構築すること自体がビジネスへのフィードバックになるという企業哲学から選ばれた敷地だという。従来ならば本社の中に食事や保育といった機能を持ち込むこともありうるが、ここでは自社の属する街全体がオフィスだと考えて街の公園や保育所、カフェ等との共存を前提としてこのオフィスが成り立っている。道路の反対側に作られた「ZOZOの広場」では近隣の子供たちがにぎやかに遊び、広場を通じて会社のスタッフと地域の人たちとの交流も盛んだとのこと。
建物に近づいていくと全く高さを感じない。やや大きめの平屋といった風情である。近隣の街並みにはすっかり溶け込んでいる。通りを歩く人が興味を持ってガラスから中を覗き込んでいる姿も見える。きわめて透明性の高いオフィスだ。その広いオフィス空間は、二十数メートルのスパンに柔らかい布のように掛けられた、懸垂型の屋根に包まれた大空間だが、居心地の良い優しい執務空間になっている。3枚の布状の屋根は天井面に織物の縦横の糸を思わせる細い木の部材で構成されていて、布効果を高めているようである。この建物随所に、アーティストの作品、特に多くの絵画が置かれている。先進的ファッション企業にふさわしく、独創性を掻き立てる役目を担っているのであろう。
コロナのせいで、訪れた当日はほとんどの社員の方がリモート勤務ということもあり、人影がまばらで広さだけが異様に目立ったが、この作品がもしコロナの時期に計画されていたら、どんな形になったのかと考えるとまた興味をそそられる。
立地を含めた計画そのものが、今までにないオフィス空間を創りだしていて、働いている人も近隣の街に住む人たちもその新鮮さに驚きつつ、楽しんでいるようである。

選考委員 可児才介

地域に潜む文化と出会えるホテル

写真撮影 Nakasa and Partners

作 者: 佐々木達郎
所在地: 沖縄県那覇市松山
作品説明ビデオはこちらから
審査講評
那覇市中心部の国道に面して建つ客室数190室の都市観光ホテルで、背後に沖縄最大の繁華街が控えて、近辺には同規模のホテルが建ち並んでいる。
国道からのアプローチに、公開空地を設けて緑の前庭とし行き交う人に憩いの居場所を提供して地域との融合を計るとともに、ファサード低層部には 花ブロックをモチーフにしたスクリーンや敷石タイル、ベンチや立体オブジェなどのコーディネートによってホテルとしての顔が整えられている。そして特徴的なのは、エントランス横に接するラウンジが視覚的にも動線上も前庭に繋がり街に開かれて、宿泊客でなくても利用できる地域の情報発信スペースとしていることである。更には、ショップ、チェックインカウンター、カフェカウンター、カフェラウンジとホテル機能と空間が奥深く連続して、そのまま裏通りにまで繋がっている。前庭から裏通りの繁華街へ誘うように、つなぎの屋内の道とガラス越しに見える緑の露地を花ブロック敷の「通り庭」として設け、内外を一体化することで、一階全体が透明度の高い空間となり、ホテルが街に公共性を提供しているところは大いに特筆できるところである。
客室においても特徴がある。沖縄の建築法を有効に活かし、このホテルの階高、客室はどのタイプも天井が高い。これを生かした客室タイプが、ホテルとしては珍しい木製ロフト付きの部屋である。また大きな正方形の窓辺に木フレーミングされたくつろぎソファー付きの部屋など、どのタイプも靴脱ぎスタイルで畳床に座り込んで過ごせ、限られた広さが十二分に活用できて解放感がある。内部の壁クロスやタイルなど、沖縄伝統の色使いが配されて落ち着きを感じ、ホテル内の至る所に展示された地元作家作品や伝統工芸品などの選定にも思想が感じられる。ご近所街歩きマップというインタラクティブな生きた情報提供など、ホテルが周辺地域と蜜実に繋がり、活性化に寄与しようという姿は素晴らしく、建築的に見事に成立しているのは、都市観光ホテルのあたらしい姿と言えるのではないか。

選考委員 藤江和子

早稲田大学 本庄高等学院体育館

写真撮影 Harunori Noda (Gankohsha)

写真撮影 Daici Ano

作 者: 飯島敦義(株式会社 日建設計)
所在地: 埼玉県本庄市栗崎
作品説明ビデオはこちらから
審査講評

小高い山の森に囲まれた本庄キャンパスにある高等学校の体育館である。
森を抜け教室校舎の背後に、小雨に濡れたコンクリートの塊が現れ一瞬驚く。
48m x 43m x 16mの立方体が、2m x 2m程のキャンティーで4周に軒を作るように一回り小さい同じコンクリートの台座に乗っている。大きなコンクリートの矩形のコーナー部は、丸く削り取られ、打ち放し面の中層レベルに大小の丸い穴がいくつも穿たれて、何やら微笑ましいい可愛らしい外観を呈している。さらに、森に生息するオオタカの繁殖時期を避けて、冬時期を待ち打設したという大きなコンクリート面は、ひび割れもなく打ち継ぎ目地のないコンクリート面を形成して優しい印象だ。
講堂としても使われるアリーナ内部に入っても、全てがコンクリートのグレートーンでありながら、人肌が触れる低層壁面と天井には吸音材などが用いられ表情がある。上部壁には無数の大小の丸孔がランダムに開けられているために、大空間にボールが飛び交い、喜びが弾けるような躍動感や、高揚感を誘ってくれて実に楽しい。この大きな気積の周囲は、構造的に大空間を支える回廊となっており、外壁と内壁とに穿たれた丸窓からの光が、直射を避けるよう制御されて体育館内部に自然光の明るさがもたらされる。この回廊空間は、自然換気や光の調節,調音対策など自然循環の力と機械設備を内包する同時実現のスペースでありながら、中層部を1周170 mのランニングコースとしていて、綿密に計画されて穿たれた孔は光を誘い視線を誘導する。外観からは想像できない解放感があることに大変感心させられる。
非常に明快なメッセージがあり、綿密な計画と緻密な設計、高度な施工によって、強靭で頼れる力強い建築の姿が立ち上がった。建築と一体化した下足棚やサイン、壁肌の細やかなコンクリート仕上げなど、心身ともに成長する多感な時期に、このような建築空間を日常的に実体験できることは素晴らしい。人の感性に響く『建築の力』を実感できるいい建築である。

選考委員 藤江和子

古家増築UPサイクル

写真撮影 繁田 諭

作 者: 野村直毅
所在地: 京都府京都市伏見区深草直違橋北
審査講評
作品のタイトルに込めた作者の想いが、見事に空間化されている。
場所は京都市南部の伏見街道沿いにあるが、いわゆる歴史的街並みを形成する町家のような古民家ではなく、どこにでもありそうな築40年程度の木造家屋が、間口が狭く奥行きの深い特有の形状をもつ敷地の中央に遺されていたという。通常ならば、既存家屋は解体のうえ、はるかに自由度の高い設計を試みるはずであるが、敢えてこれをコアの空間とした増築を選択し、効果的な床面積の最大化を目指したものである。その結果、新築によって機能性と効率性を追求することでは得られないような生活空間の余白が随所に発生し、床面積からは想像もできないほど豊かな多様性に満ちた場所が設えられている。これを可能とした要因は2つあると思われる。その1つは、既存家屋の丹念な調査とその価値を活かす設計ならびに施工のプロセスである。とりわけ、実測調査によって構造上の課題を確認するとともに通り芯と軸組の再定義を行い、それらに基づいて増築部分による既存家屋の補強が可能となる構法を検討し、施工過程では一体的な基礎の打設を行っていることが注目に値する。さらには、このプロセスにおいて既存部と増築部にまたがる部分にこそ、豊かな空間的多様性がもたらされていることを特筆しておきたい。2つめの要因は、関西地方の伝統的な町家にみられる空間構成の原理が、現代的に変換されていることである。狭い間口幅の敷地に対し、深い奥行きに沿って家屋と庭が交互に配置され、それらを統合する軸空間としての「とおりにわ」による空間構成であるが、ここでは、長さ30mにおよぶ増築部分の通路が敷地を貫き、交互に反復される居室と屋外空間をつないでいる。しかし、その通路の床レベルには絶妙なリズムで設定された段差があって、それこそが家族にとって心地のよい居場所をあちこちにうみだすきっかけとなる。京都・伏見におけるローカルな試みではあるものの、この作品の設計プロセスと空間構成には、既存ストックの再生に加えて、新たな価値を付加していくための理念と手法において、幅広い普遍性を垣間見ることができる。

選考委員 宮城俊作

葉山加地邸

写真撮影 Takumi Ota

作 者: 神谷修平
所在地: 神奈川県三浦郡葉山町一色
審査講評

葉山の緑深い住宅地の中でも一段と木々に囲まれた坂道を登ったところに1928年にフランクロイドライトの弟子遠藤新によって設計された別荘建築がある。ライトの強い影響を受けたプレーリースタイルのデザインで重層する屋根と大谷石の柱が強いイメージを形づくっている。
国指定の登録有形文化財に指定され保存されてきたが利用者が少なく老朽化が進行していた。
別荘の所有者が変わって新しい所有者は民泊による一棟貸しホテルに再生し「世界から建築文化を愛する人々呼びたい」という発想で既存のデザインを損なう事なくホテル施設として再生する事を望んだ。再生計画は3つの保存レベルを設定し「歴史を尊重して保存に徹するエリア」「家具照明等を新設して歴史と現代を融合するエリア」「現代的に再生するエリア」に区分して、それぞれのエリア毎にデザイン展開させている。
延床面積364㎡の広大な別荘の為数多くの寝室があり、ホテル仕様にする時に基本的に平面計画は既存のまま利用できる為に大きな変更は必要なかったと思われるが、一部バック関係の諸室を改造して大浴場を新設する等の工夫が見られる。又室内空間であった部分をダイニングから連続するオープンテラスに開放する等ホテルらしい空間創りにも成功している。ライトの有機的建築の理念を継承してデザインの統一を計り細部に至るまで現代性を採用しながらオリジナルのデザインを引き立てる手法に成功している。外観は殆ど本来の姿のままで芝生の庭園から続くサロンスペースが明るい開放的な葉山の環境に溶け込んで居心地良い場所になっている。創造的保存をテーマに携えて保存再生プロジェクトに挑んだ設計者の試みが成功して、新しいホテルとしてよみがえり上質な空間を多くの人々に体験されられる機会を提供できた事は高く評価される。
この建築を蘇らせようと考えたオーナーの姿勢に敬意を払いた。
保存再生プロジェクトの高度な実施例として特別賞に価する。

選考委員 岡本 賢

有明体操競技場

写真撮影 鈴木研一

作 者: 株式会社日建設計、清水建設株式会社、斎藤公男(技術指導)
所在地: 東京都江東区有明
審査講評

有明体操競技場は2021年夏に開催された東京オリンピックの体操競技会場、パラリンピックのボッチャの会場である。東京のウォーターフロント有明北地区に12,000人収容の仮設の競技施設として整備されたものである。また、この競技場の北側にある高速道路越しには、バレーボール会場となった「有明アリーナ」が見える。
この建物は屋根の架構、外壁、観客席などに主要な部位に木材を活用している。敷地の記憶として、元々「有明北貯木場」として使われていたことや、日本の「木文化」を広く内外に発信することを目的として木材を採用することにしたとのことである。また、国の方針でもある「脱酸素社会の実現に向けて公共施設における木材利用促進」にも合致している。
敷地は東雲運河に面し、大きな広がりのある空間の中に、美しい水平ラインの深い軒と高さを抑えた緩やかなアーチ状の屋根が大変印象的な風景を創り出している。さらには、外部のコンコースの深い軒に向かって反りあがる形状の木の角材を積み上げた外壁は軽やかに人々を迎え入れてくれるような趣がある。かなり大規模な建築にもかかわらず、その大きさを感じさせない。外壁の夜景の写真を見ると、ライトアップされた建物全体が浮かび上がる様は大変神々しく美しい。
最大の特徴は大きな屋根を支える「複合式木質張弦梁構造」であろう。90mに及ぶカラマツ集成材(1150×220)の連続するアーチと鋼製の小径のケーブル構成された張弦梁が軽快でダイナミックな大空間を創り上げている。高度に優れたな構造・施工技術がこの形を実現させているのである。また隅々まで洗練された木の使い方やディテールが木の持つぬくもりと合わせて、とても親しみやすい空間を醸成しているであろうと思われる。ただ、誠に残念ながら、今回のオリンピックではコロナ感染対応のためこの有明体操競技会場も含めほとんどの競技が無観客となったのである。しかしながら、日本選手が活躍した映像を通して、建物の様子や競技会場の雰囲気を感じ取れたのではないかと思う。
今後この施設は、内部を改修した後、東京都の展示場として利用される予定である。この施設の内外の空間を実際に体験できるようになることが大変楽しみである。

選考委員 東條隆郎

能作 新社屋・新工場

写真撮影 広谷純弘

作 者: 広谷純弘、石田有作/アーキヴィジョン広谷スタジオ
所在地: 富山県高岡市オフィスパーク
作品説明ビデオはこちらから
審査講評

晩秋の北陸路は生憎の時雨であったが、JR新高岡駅から近郊の能作新社屋を訪ねた。
この地は私にとっても地元であり工芸高校で学んだ思い出の地だ。高岡市が新しくオフィスパークとして工場の誘致を進めている中にあった。新社屋建設と共に「産業観光の拠点づくり」を目指し「モノづくりの場からのメッセージを形にすること」の意気込みに引かれ興味が湧いた。
社屋は大きく横に伸びた建屋で、上部に赤い曲線の屋根を載せた、あっさりとした感じであった。
エントランスに入ると正面のガラス張りの「木型原型」収納庫が圧巻であった。木型のかたちの連続が美しかった。これが眼目の一つである事は解った。
この社の主素材は「錫」である。漢字で「、錫」は金と易からなる会意文字といわれ、容易に伸びる金属の意とある。融点は232℃と低く、主要鉱石の「錫石」からの精錬が容易で人類史において、もっとも早くから使用され、銅との合金で「青銅器」は紀元前3000年ごろ、メソポタミアで初めて開発された。時報として鳴らすベルや仏教で使われる仏具の鈴・釣鐘などの製造材料として使われている非常に安定した材質であり、現在も現役で使われている。
人類は石器から青銅器へ時代が移行した。日本には奈良時代以後に大陸より茶と共に持ち込まれ、茶壷、茶碗など伝わった。毒性が低く腐食に強い性質で、茶道具、神・仏具、徳利、高坏などに使われている。中世ヨーロッパの銀食器に次ぐ「器」として「ピューター」がある。「ブリキ」は鋼板に錫メッキをしたもの、さらに「はんだ」は最も使用されているものだ。
長い伝統受け継いだ鋳物メーカーとして、きわめて興味深くモノづくりとして可能性を感じた。
新社屋・新工場になり見学者の数が年間14万人に伸びたとか。社員の平均年齢も40代など、若い社員が生き生き働いて居場所がすばらしいと思った。 体験工房、ショップ、カフェ、ギャラリーなど観光部に力がそそがれて動き始めている。いろいろな仕掛けや取り組みは訪れる人を楽しませ創造的であり、美術工芸賞として評価できる。

選考委員 米林雄一

METALISM

写真撮影 プラナス株式会社

作 者: プラナス㈱
代表取締役社長 林 正剛
執行役員クリエイティブディレクター 福田和将
所在地: 東京都 大田区羽田空港1-1-4 羽田イノベ―ションシティー
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審査講評

「METALISM」は羽田空港に近接する「羽田イノベーションシティ」内に、地元大田区に基盤を持つ町工場を中心に金属・塗装・表面加工に特化したトップ7社の企業が集まり、分野や業種の垣根を超えイノベーションを発信したいとの思いから開設した活動の拠点である。
7社はこれまでは受託生産を主に行っていたが、次なる発展に向けて他のパートナーとの協業により新たな付加価値を創造することを目指している。その7社は下記の通りである
・ヱビナ電化工業 株式会社(大田区) めっき関連技術
・株式会社 エムアイ精巧(埼玉県)  プレス加工、金型開発
・株式会社 金属被膜研究所(品川区) 無電解Niめっき
・株式会社 タムラエジア(大田区)  金型設計、高精度加工
・株式会社 藤田ワークス(鹿児島県) 精密板金
・有限会社 望月塗工研究所(大田区) 鋳物・特殊機器塗装
・株式会社 リプスワークス(大田区) レーザー微細加工
この7社が自分たちの持つ高度な金属加工技術力から生み出されたオブジェや製品を使い、この活動の空間「METALISM」LOUNGEをつくり上げている。 
このLOUNGEに入ると正面に四角いカウンターがある。カウンターはショーケースとなっていて各社の持つ技術から生み出された「モノ」たちが納められている。とても興味深い技術や製品の集大成である。また、カウンター内のテーブル中央から天井に向けて、鏡面に仕上げられた大小様々な四角い金属の葉が舞い上がるような造形が、内外から差し込む光に輝く様は大変印象的である。そのほか、低温メッキ技術が施された「自然の木々の葉」、特殊塗装技術で覆われた「メタル石」、精密に再現された金属植栽や表面を波紋加工した「金属水盤」などがディスプレーされており、非常に高い技術や素材が生み出す新たな可能性に興味が尽きない。建築、美術、工芸やランドスケープなど様々な分野においても協働の可能性を秘めているのではないかと思われる。
この「METALISM」、日本のみならず日本の玄関口から世界に向け「イノベーション」を発信するという高い目標を持った活動が、次々と新たな価値を生むことに大いに期待するとともに、AACAの理念にふさわしい活動として美術工芸賞奨励賞を送るものである。

選考委員 東條隆郎

入選作品[7作品]
トヨタ紡織 グローバル本社

写真撮影 エスエス名古屋

作 者: 長谷川 寛、石黒紘介、杉森大起、 (株式会社 竹中工務店)
所在地: 愛知県刈谷市豊田町

古民家ヴィラ あんたげ

写真撮影 納谷建築設計事務所

作 者: 納谷建築設計事務所 納谷 学・納谷 新
所在地: 福岡県朝倉郡東峰村大字宝珠山字竹
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はつせ三田

写真撮影 桜継泰介

作 者: 井原正揮、井原佳代
所在地: 東京都港区三田
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むさしのエコreゾート

写真撮影 畑 拓

作 者: 水谷俊博(水谷俊博 建築設計事務所/武蔵野大学)
木村 浩、三浦伸夫、関 彩奈(武蔵野市)
渕上朋子(水谷俊博建築設計事務所)
所在地: 東京都武蔵野市緑町
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岩国のアトリエ

写真撮影 野村和慎

作 者: 向山 徹
所在地: 山口県岩国市黒磯町
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大光電機株式会社技術研究所

写真撮影 稲住写真工房


作 者: 株式会社大林組/東井嘉信、西森史裕
大光電機株式会社/安東克幸、川中祐介(照明計画)
所在地: 大阪府東大阪市角田

高浜町漁業6次産業施設 UMIKARA

写真撮影 笹倉洋平(笹の倉舎)

作 者: ジオ―グラフィックデザインラボ/前田茂樹、田中宏幸、藤本雅宏
所在地: 福井県大飯郡高浜町塩土
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