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AACA賞

第20回 AACA賞

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当間高原リゾートベルナティオ la Sala/FIORIA

作 者:鹿島建設(株) 一級建築士事務所 澤田英行/NUNO 安東陽子/
    岡安泉照明設計事務所 岡安 泉
審査講評

 円形水盤上に、今飛び立たんとする四角錐が絶妙のバランスで爪先立つような佇まい。その屹立する一面が解放されて、三角多面体が空気や光を含んで空間を形成し軽やかに在る。内部は此の土地で親しみ愛でられるカキツバタの花冠と雪の結晶からイメージされ紐解かれた六角形の紋様が隅々にまで施されて微妙な透過の濃淡を生んでいる。それは真っ白なオーガンジーに、紋様が陽光に輝く雪の表面のような特殊技術によりプリントされた布である。精緻に組まれた木骨に巧妙に埋め込まれたLEDの光によって、微かにきらめき浸透させながら繊維を透した光の解像度を微妙に変化させて新たな濃淡の表情を浮かび上がらせ、無限のグラデーションを内包する空間となっている。溶け出ていた光の形は落日とともに表出し、水滝の光と対峙してやがて漆黒の円盤上に屹立する。幾何形態の集合の造形は、建築、テキスタイル、照明デザイン、木工技術の密實なコラボレーションによって、緊張感と優しさ、精密さ、華やかさが一体となって美しく感動的。
AACA賞に相応しい珠玉の空間である。

選考委員 藤江和子

国際教養大学図書館棟
作 者:仙田 満 (仙田満+環境デザイン研究所)
審査講評

 秋田市の南にある、講義はすべて英語、各学年150人が、全員寄宿生活と海外留学をしなければならないという、独特の教育システムの大学のシンボルとして建てられた図書館である。鉄筋、鉄骨のRCと木造の混合構造だが、目に見える限りは木造のみ。
 6本の高さ13メートルの集中柱を中心に、外壁も含めて、すべて地元の秋田杉で、放射状に広がる、むき出しの屋根架構の、から傘の骨組みを複雑にしたような木組みのディテールが美しい。 300の閲覧席が、1メートル段差を設けた3層のフロアに整然と配置されている。
 図書館にはきわめて珍しいこの段差によって、1500㎡というスペースに、実にゆったり感が生まれ、10万冊の蔵書、24時間、年中無休という図書館に居心地よさを与えた。
 とりたてていうべきアート・ワークがあるわけではない。しかし伝統的な組み手など手わざを生かし、周辺の自然のたたずまいを取り入れた、作者の“ 芸術心 ”が、この木の空間にみなぎっている。
 数々の実績ある大家が、あえてこの賞に挑戦した心意気にも感服する。

選考委員 加藤貞雄

木材会館
作 者:(株)日建設計 山梨知彦 勝矢武之
審査講評

 木材流通の中心、新木場に、東京木材問屋共同組合の拠点として建てられた。近くを走る電車の車窓からも太陽の光を受けとめた檜の角材の外装の柔らかい色、木材の質感までがはっきりとわかるデザインの建物である。 耐火性能の問題をクリアーし、檜を中心に1,000立方メートル以上の木材を、コンクリートと鉄の構造体を覆った外装、内装、構造材として使っている。 角材をボルトで面材となるよう繋ぎ、檜のオブジェ、檜舞台、西日除けの大きなシェルフなど、簡潔で無理のない形をつくりだした。圧巻は7階の檜ホールである。 伝統的な継手工法に現代的なボルト締め工法を組み合わせて、12cmの節だらけのありふれた安い角材から大空間を支える巨大な構造材へと変身させた。黒ずみも自然がつくり出す日本の風景の一部であると考え、都市から失われて久しい木材による懐かしい景色の復活に挑んだ設計・工事関係者、木材問屋共同組合の見事な挑戦であった。
10年後、20年後が楽しみである。

選考委員 近田玲子

三菱一号館と一号館広場
作 者:(株)三菱地所設計 取締役社長 小田川和男
審査講評

 旧三菱一号館は1894年(明治27年)に竣工した丸の内最初のオフィスビルである。その後、戦後の高度成長期にレンガ造のオフィスは次々に姿を消し、昭和43年に旧三菱一号館は姿を消すにいたった。 近年丸の内地区は、丸ビルの建て替えを始め、戦前戦後に立てられたオフィスビルの多くが新しく立て替えられ、現在世界有数の超高層オフィス街区を形成するにいたっている。
 街区整備の一環として、三菱一号館が、以前建っていた場所に当時用いられた建築技術を踏襲し、建設時の姿そのままに復元、美術館として活用され、あわせて一号館と一体になった広場が新しい都市の憩いの場として作られた。
 復元された建物には、建設当時の建築と美術工芸の見事な融合を見ることが出来る。
 又新しく造られた緑豊かな英国を思わせる庭園は、訪れる人たちに建築と一体となった豊かな安らぎの空間を提供している。
 新しい街づくりにあたり復元という手法により作り出した空間は、過去から現在につなげる豊かな文化を発信する点で非常に意義深いと考える。
 復元の持つ特別な意味合いを含めてこの建築および広場は、AACA賞に値するものである。

選考委員 小倉善明

和光本館リニューアル

撮影:村井 修

作 者:清水建設(株)/
    アーキテクト:清水建設(株)一級建築士事務所 坂井和秀・定久岳大・鈴木智朗/

    インテリアデザイン:(株)フィールドフォー・デザインオフィス 志村美治/
    ライティングデザイン:(株)ワークテクト 金田篤志/
    サインデザイン:井原理安デザイン事務所 井原理安/
    コンストラクション ディレクション:清水建設(株) 永田正道/
    コーディネーション:清水建設(株) 塩原祐吾/
    オーナーインハウスデザイナー:(株) 和光 武蔵 淳
審査講評

 東京を代表するだけでなく、日本を代表する都市空間である銀座4丁目の象徴としてこの建築は日本人の記憶から消す事はできない。
 建築が単なる商業施設としての機能を越えて社会的・文化的資産としての価値を最大限に体現している。その意味を重く捉えて、いつまでもこの建築をそのままの姿存続させようとするクライアントの強い意志と、それを実現させた高い技術力は賞賛に価する。 渡辺仁による当初の設計のイメージを極力忠実に復元させ、耐震補強の為の構造部材の存在を全く感じさせない様に処理された、卓越な技術力は評価される。 そして創設当時の姿に復元された居室が時を越えて上質な空間を感じさせてくれる。 
 クライアントと設計・施工が一体となって完成させた建築が優れた文化遺産として世紀を越えて人々に感銘を与え続ける。

選考委員 岡本 賢