写真撮影 広谷純弘
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この地は私にとっても地元であり工芸高校で学んだ思い出の地だ。高岡市が新しくオフィスパークとして工場の誘致を進めている中にあった。新社屋建設と共に「産業観光の拠点づくり」を目指し「モノづくりの場からのメッセージを形にすること」の意気込みに引かれ興味が湧いた。
社屋は大きく横に伸びた建屋で、上部に赤い曲線の屋根を載せた、あっさりとした感じであった。 エントランスに入ると正面のガラス張りの「木型原型」収納庫が圧巻であった。木型のかたちの連続が美しかった。これが眼目の一つである事は解った。
この社の主素材は「錫」である。漢字で「、錫」は金と易からなる会意文字といわれ、容易に伸びる金属の意とある。融点は232℃と低く、主要鉱石の「錫石」からの精錬が容易で人類史において、もっとも早くから使用され、銅との合金で「青銅器」は紀元前3000年ごろ、メソポタミアで初めて開発された。時報として鳴らすベルや仏教で使われる仏具の鈴・釣鐘などの製造材料として使われている非常に安定した材質であり、現在も現役で使われている。
人類は石器から青銅器へ時代が移行した。日本には奈良時代以後に大陸より茶と共に持ち込まれ、茶壷、茶碗など伝わった。毒性が低く腐食に強い性質で、茶道具、神・仏具、徳利、高坏などに使われている。中世ヨーロッパの銀食器に次ぐ「器」として「ピューター」がある。「ブリキ」は鋼板に錫メッキをしたもの、さらに「はんだ」は最も使用されているものだ。 長い伝統受け継いだ鋳物メーカーとして、きわめて興味深くモノづくりとして可能性を感じた。
新社屋・新工場になり見学者の数が年間14万人に伸びたとか。社員の平均年齢も40代など、若い社員が生き生き働いて居場所がすばらしいと思った。体験工房、ショップ、カフェ、ギャラリーなど観光部に力がそそがれて動き始めている。いろいろな仕掛けや取り組みは訪れる人を楽しませ創造的であり、美術工芸賞として評価できる。