写真撮影 鈴木研一
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作者の弁では通常「ホテルは旅の中にある」のだが、このホテルは「旅を内包する」という。アートによる街づくり運動の「岡山芸術交流」と連動して岡山の日常にアートを仕込むという企ての一環で創られたホテルである。田の字構造を微妙にずらすことによって生まれる上下の接続が、動線だけではなく空間のつながりも創りだし、最上階から取り入れた天空光が1階にまであふれる。まさにアートの空間だ。
一方、CLTの組み立てにはかなり精緻な技術が使われている。作者の豊かな経験と知恵がふんだんに盛り込まれていて、伝統的な嵌め合わせの手法に最新の金物技術を加えて強靭な「田の字」の構造体が出来上がった。
設備的な温熱環境の工夫はもちろんのこと、地球環境に対しても鋭い感覚が示されている。協働するアーティストが作り出したという巨大な文字列が外壁に取り付けられているが、これは折しもノーベル賞を受賞した、日系人科学者真鍋淑郎の創りだした温暖化を示す数式であり、これを通じて地球環境の危機を訴えたいというメッセージになっている。
きわめてユニークで、衝撃的で、建築自体がアートになっている優れた作品である。