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AACA賞2021
AACA賞
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長野県立美術館
AACA賞2021 AACA賞
長野県立美術館
作 者:宮崎 浩 (株)プランツアソシエイツ
所在地:長野県長野市箱清水
写真撮影 北嶋俊治
写真撮影 北嶋俊治
写真撮影 走出直道 / (株)エスエス
選評
この美術館は善光寺の東側にある城山公園内に、プロポーザルにより選定された作品である。建物は約10メートルの高低差のある善光寺に面した斜面に埋め込まれるように配置されている。敷地の東側の一番高いレベルに3階のエントランスがあり、その前の車寄せから美術館が平屋建てのように見え、ボリュームを感じさせない。内側に檜のルーバーで覆われた大きな庇とその前面に西側に大きく開いた伸びやかな屋上広場があり、その広場の水平線上の視線の先に、緑の山並みを背景としてボリュームのある緑の中に佇む善光寺が見える。屋上広場の西・北川外周部が傾斜のある「草屋根」となっており、周囲の景観との一体感・つながりが感じられる。とても落ち着きのある美しい空間・景観であり、美術館にいることを忘れてしまうような設えである。
北側にある谷口吉生氏設計「東山魁夷館」との間に、敷地の高低差を巧みに利用した東西を上下に抜ける空間があり、その斜面に沿って水景が創られている。この空間は林昌二氏設計「旧信濃美術館」が建っていた場所である。この跡地が空地として視線が抜けることや、自由に行き来できるパブリックな空間であること、さらに、水景の中間にあるデッキ「水辺テラス」や中谷芙二子氏の「霧の彫刻」が存在することで、動的で魅力的な空間となっている。また、この特徴的な「抜け」空間の存在が「東山魁夷館」と対峙するのではなく、時間の隔たりを超えて両者の共存を自然なものとしているように思える。
美術館内部はこの水景を持つ高低差のある抜け空間に沿って、エントランス、展示室前のホワイエ空間、ミュージアムショップ、アートライブラリーなどの施設が配され、しかも展示室以外は自由に出入りすることができるパブリックな連続した空間となっている。そのつながり具合やボリューム感も心地よい。さらには外部の水景や公園の広がり、その場に集う人々の様子や遠方に見える山並みなどの周囲の景観との一体感が感じられる設えである。実に巧みな構成であり、大変心地よい空間である。自分の居場所が自然に理解できることもその心地よさを感じさせる所以であろう。
設計者は、この美術館は風景に突出することなくランドスケープと建築の一体化を図った「ランドスケープミュージアム」であると表現している。確かに美術館全体が「東山魁夷館」とともに従前からこの周囲の景観とともに存在してしたかのようにも思え、今後、多くの人々に親しみをもって利用されることが期待される美術館である。設計者の意図を十分感じることができるAACA賞にふさわしい作品である。
選考委員 東條隆郎
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北側にある谷口吉生氏設計「東山魁夷館」との間に、敷地の高低差を巧みに利用した東西を上下に抜ける空間があり、その斜面に沿って水景が創られている。この空間は林昌二氏設計「旧信濃美術館」が建っていた場所である。この跡地が空地として視線が抜けることや、自由に行き来できるパブリックな空間であること、さらに、水景の中間にあるデッキ「水辺テラス」や中谷芙二子氏の「霧の彫刻」が存在することで、動的で魅力的な空間となっている。また、この特徴的な「抜け」空間の存在が「東山魁夷館」と対峙するのではなく、時間の隔たりを超えて両者の共存を自然なものとしているように思える。
美術館内部はこの水景を持つ高低差のある抜け空間に沿って、エントランス、展示室前のホワイエ空間、ミュージアムショップ、アートライブラリーなどの施設が配され、しかも展示室以外は自由に出入りすることができるパブリックな連続した空間となっている。そのつながり具合やボリューム感も心地よい。さらには外部の水景や公園の広がり、その場に集う人々の様子や遠方に見える山並みなどの周囲の景観との一体感が感じられる設えである。実に巧みな構成であり、大変心地よい空間である。自分の居場所が自然に理解できることもその心地よさを感じさせる所以であろう。
設計者は、この美術館は風景に突出することなくランドスケープと建築の一体化を図った「ランドスケープミュージアム」であると表現している。確かに美術館全体が「東山魁夷館」とともに従前からこの周囲の景観とともに存在してしたかのようにも思え、今後、多くの人々に親しみをもって利用されることが期待される美術館である。設計者の意図を十分感じることができるAACA賞にふさわしい作品である。