AACA賞2020 優秀賞|のだのこども園
AACA賞2020 優秀賞
のだのこども園所在地:千葉県野田市蕃昌338‐2
トピックス OPINIONS アートと文化と環境と |
デジタルギャラリー 作品一覧 |
AACA賞 本年の受賞作品 応募要項 |
aacaについて aacaの活動 会長あいさつ 憲章・理念・沿革 活動・組織 会員名簿 入会案内 法人情報 イベントカレンダー コンプライアンス お問い合わせ アクセス |
会員ページ aacaカレンダー 総会 HP掲載依頼 各種書式DL |
所在地:千葉県野田市蕃昌338‐2
現地に立ち、配置計画を読み込むと、長い時間の中で増築を重ねた特徴的な形を持つ既存の3つの園舎に囲まれた園庭が今回の計画に沿って木々の間に伸びやかに広がっている事がわかる。子供たちの活動と心の中心は園舎の広場から木々の間の園庭である。新しい建築は、子供たちの生き生きとした活動の中心となるのびやかな園庭と呼応するような深い庇を持つおおらかな縁側空間が奥まで長く伸びた建築となっている。垂直に伸びる大木の林と対比するような水平な建築はダイナミックであるが、包み込むような優しい表情を持っている。
その表情を作っている建築の骨格は木と鉄骨のハイブリッド構造であるが、園児や保護者に、建築の圧迫感を全く感じさせていない。材料の特性を活かした構成が優しい表情の建築を作り出している。「木造」にこだわりすぎることなく、子供たちの活動のために適材適所に鉄骨造を駆使し、半屋外の深い庇の廊下に面して全開放可能な引違いのサッシ、レール等のディテールまできめ細かく行き届いた設計は、建築の存在を強く主張することなく、むしろ背景として消える方向となることで、おおらかな居場所を作り出している。図面ではよく解らなかったことも実際の空間を経験することで多様な構成の意味が腑に落ちてくる。
2階レベルは保育室と木々の間に木製ルーフデッキが広がり、大木を避けるように雁行し、奥の遊戯室へつながっている。この場所に古くから根付いている大きく枝を広げた大木の林と高い空、という、他では経験できない豊かな空間の素晴らしさを感じる体験は子供たちの記憶に深く刻まれるだろう。
設計者はこれらのさりげない佇まいを、優れたアイデアと技術を駆使し実現している。また、表現のためでなく長く使われたためのメンテナンスへの対応が、デッキの雨水処理など、各所の丁寧なディテールに感じられる。どうしたらこどもたちの日々の生活が楽しく安全で、豊かな時を過ごせるのかそして、毎朝ここに来るのを楽しみにしているこどもたちの笑顔が想像できる場所というような建築の本質的目的を理解し、それを優れたエンジニアリングで実現した設計者の力量は素晴らしく、AACA賞優秀賞に相応しい作品である。