AACA賞2020 芦原義信賞(新人賞)|CHRONOS DWELL
AACA賞2020 芦原義信賞(新人賞)
CHRONOS DWELL所在地:広島県広島市安佐南区大町東
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所在地:広島県広島市安佐南区大町東
スタートは事業収支の計算で、賃貸アパート15戸を作ることだった。しかしここから、作者の発想がふつふつと湧き出てきたようだ。15戸を4つのコミュニティに分けそれぞれのコミュニティは広場と路地を持ち、4戸の住宅は必ず広場に面する。また4戸の住宅は建物としてつながっており、一つの建築になっている。さらに15戸の住宅には一つとして同じ平面を持つものはない。そんな発想だ。実施にあたっては一挙にすべてを作るのではなく、まず4戸の一つのコミュニティを先行して完成させ、様々な問題点を洗い出した。それらの解決策を盛り込んで残りのコミュニティも完成させたという。子育て家族を対象とした賃貸アパートである。
前面の道路から近づいて行くと、馴染み易いスケールの住宅群が目に飛び込んでくる。それぞれの空間単位を周辺よりやや小さなボリュームにすることで圧迫感を軽減するという計画の結果である。写真で見た銀色のガルバのギラギラ感はほとんど感じない。まさに環境に溶け込んでいて前からあったような親しみを感じる。コミュニティ内の路地に入り込むと、子供のころに経験した家と家の間の、探検したくなったあの細い道の空間の記憶が重なる。2階は1階とは平面をずらして配置、入り組むように交差していて、まさに積み木の世界だ。 その結果、別の家の寝室の下が我が家の玄関の前の路地になったり、別の家の屋根が我が家のバルコニーになったりする。個別の住居の領域はしっかり確保されているのに、一方で路地と広場による「弱い境界線」がコミュニティの結びつきを作った。子供たちはこの外部空間を完全に共有しているようだ。住宅の内部も同様に、育ち盛りの子供たちには遊ぶ場所には事欠かない。きわめて新鮮なデザインソリューションであり、芦原義信賞にふさわしい作品である。