美和ロック探訪の足跡------(平成19年3月26日訪問)
プロローグ
「お手持ちの鍵をご覧になってみてください。MIWAの文字が、記されていませんか。」美和ロックの会社案内最初の一文に、改めて自らの手元の鍵を確かめてみる。ホントだ、MIWAの文字!
知らない内にお世話になっていた美和ロックの本社は、今何かと話題の東京タワーが目の前にそびえる芝公園の一角にある。





ロータリーエンジンを
 独自に考案

創始者の和氣一郎氏(現社長のお祖父様)は、西独で開発される数十年前に、独力でロータリーエンジンを考えていたという並外れた独創性と先見性を備えた技術者。戦時中は心ならずも軍需工場として鉄砲の弾などを製造していたが、戦後は平和産業に。世界を旅していた氏は、住宅の欧米化と高品質の鍵の必要性を素早く察知し、日本銀行からの特殊錠受注をきっかけにロック専門メーカーとして再スタート。『品質第一主義』の美和ロックの誕生だ。現社長・和氣英雄氏は4代目。
和氣英雄社長

良いものは必ず売れる
皆さんの家の扉は内開き?それとも外開き?
玄関で靴を脱ぐ日本では外開きが圧倒的に多い。ウサギ小屋と言われるほど狭い住宅なのに、下駄箱は玄関の必需品。おまけに雨の多い国とあっては、外国映画のように恰好良く“Come in”と扉を内側に開くというわけにはいかない。
しかし、外開き扉は防犯上大きな問題があった。外枠とのすき間が6?7mmも空いてしまう。この問題を解決したのが、握り玉(ドアノブ)の中にカギ穴をつけた「本締り付きモノロック」だったそうだ。
それを「良いものは必ず売れる」と作り続けた。ものには限度があると思うけれど、倉庫が一杯になってどうしようもなく、営業4人で売り歩くことになったというから傑作だ。それが昭和32年。
昭和47年には国内トップシェアーを誇る会社に成長した。
因みに、この靴を脱ぐという生活習慣が日本人の「うち」「そと」の感覚を形成してきたと指摘したのはaacaの創始者・故芦原義信氏(『街並みの美学』)。何だか来るべきところに取材に来たような感じだ。


高品質と大量生産を可能にした金型
日本では昭和30年頃まで鍵に対する認識が希薄だった。今でも田舎へ行くと、鍵を締めない家を見かけるが、これは治安の良い日本ならでは。しかし、もっと根底には「しめ縄を張るなどして、締まりや結界の存在を他人に知らしめるだけで事足りたであろう我が国」(赤松征夫著『錠と鍵の世界』より)の文化的背景があることを、aacaとしては見逃してはならない。
そして、一旦高品質性を目指すとなると、徹底してその道を追及して世界一になるのも日本だ。
創始者の和氣氏は、当時主流だった鍛造での製造に見切りをつけ、金型を採用する。外注では品質を一定のレベルに保つことが難しく、コストが掛かり過ぎるために、自社で金型を使った生産に踏み切った。
鍵はギザギザのある鍵山の数、山の深さ、カギ穴の形状などの組合せによって、何千万という「鍵違い」を作り出す。この鍵違いが多ければ多いだけ防犯性が向上する。
金型による板加工にすることで、美和ロックでは鍵のパターンが増やせ、セキュリティ向上に繋がったのだ。(それにしても、1本でどの戸も開けられるマスターキーを考えた人は凄い!)


マスターキーの正体を和氣社長自らが図解して下さった。(上)
ショールームでは実物も見せていただいた。(下)
お国柄が表われる鍵事情
ヨーロッパでよく見かける真鍮の取っ手は、手入れすると時代と共によい風合いに変化する。メンテナンスフリーや清潔感が大切にされる日本では、ピカピカに光った鍍金のものか塗装のものが多い。アメリカは汚れても気にしないそうだ。
レバーハンドルひとつをとっても、ヨーロッパで使われている真鍮製では日本人には重すぎる。かと言って軽くするとすぐにヘタってきてしまう。防火の関係もあり日本はステンレス製が多い。アメリカではこれまたヘタってもOK。
意匠はと見ると、デザインも様々に工夫されて見応えのあるヨーロッパ。握り玉の歴史から非常口がパニックハンドル(レバーハンドル)に変わったのがきっかけに画一化されてきたアメリカ。ほとんどの住宅が引き戸からドアーに変わり、この2〜3年目まぐるしく新商品が出てきている日本と、お話しを伺うほどにお国柄が垣間見られて面白い。


「昔はビルを設計する場合に、鍵付きの戸については直接コルビン、シュラーゲ、エールなど海外の鍵メーカーに注文していた。丸の内の全てビルが1本のマスターキーで開いた。」と話してくれたのは取材に同行してくれたaaca中島会長。(上)

ドロボーから学ぶ未来の鍵
指紋を感知するものから静脈解読へ。赤外線のキーレスだったものが、電波に。セキュリティと利便性を求めて、数々の展開を見せている鍵だが、要は「暗号解読装置」。本人が開ける意識(意思表示)をどのように伝えるかのシステム。もうすでに、車のキーで家の扉の開閉から炊飯器のスイッチまで入るシステムも、異なった業種が集って共同開発されているらしい。
ところで、最近はCP錠という泥棒の心理や行動パターンを考えた堅牢な錠があるらしい。一方、錠が堅牢であるが故に、緊急時に簡単に入れないとうこともある。最近、都心のマンションから救急車出動依頼を受けた場合には、レスキュー隊も一緒に出動するらしい。防犯と救急・消防をどう両立させていくのか、今後の大きな課題となりそうだ。
◆これは昔々のカギ

これは、古代エジプトで使われていた鍵のレプリカ。
取っ手を操作し、ピンを押し上げて開ける仕組みだ。

◆これも未来への確かな一歩!!

 
身障者の方でも、大きな荷物を抱えてる人でも、肘などを使って簡単に開けられる。

◆ショールーム見学
本社社屋の中に、鍵の"現在"と"明日"が一望できるショールームが・・・。ここを和氣社長が先頭に立って案内してくださいました。
左上は、ホテルでよく見かけるカード式キー。暗号を変えることによって時間も管理できるし、すべて開閉の記録も残せる。賃貸マンション、モデルルームなどでも使われる。






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