コトブキ探訪の足跡------(平成20年7月2日訪問)
 あなたも、きっとコトブキの椅子に座ったことがある。こう書くと、そんな覚えはないよという声も聞こえてきそうだが、コトブキが劇場や映画館、スポーツスタジアム、あるいは学校のイスのトップシェアを誇るといえば、なるほど一度ぐらいは座ったことがあるかもしれないとお思いになるのではないだろうか。
 コトブキは、1916年の創業。以来、持ち味の”企画開発力”、”デザイン力”、”技術力”で「イスのコトブキ」として、特にパブリックスペースの分野では全国随一の企業としてその名を知られている。

第一歩は東大から
 コトブキのショールームは東京の浜松町駅から徒歩3分。その7階のプレゼンルームからは、ゆりかもめ、新幹線の線路を挟んで浜離宮の広大な森と、汐留の新ビル群が見渡せる。そしてこのプレゼンルームには、とても珍しいイスたちも展示されていた。その一つが、大正14年に竣工した東京大学安田講堂のイス。これは復刻されたものだが、竣工当時納入したのはもちろんコトブキ。これがコトブキにとって、パブリックファニチュアメーカーとしての輝かしき第一歩なったのである。
東京大学安田講堂のイス(左上)の他にも、昭和3年竣工の東京帝国大学工学部一号館に収められていたイスや、グラインドボーンオペラハウス(英国)やスポーツと娯楽の殿堂であるマジソンスクゥエア・ガーデン(ニューヨーク)の改築に伴い納入されたイス、あるいは戦後日本における工業デザインのパイオニア・柳宗理氏デザインのイス等々、コトブキの歴史の一片を彩る作品が展示されている。

思わぬハプニングが…
 今回このプレゼンルームで取材に応じていただいたのは、代表取締役会長の深澤重幸様(写真奥左)と、営業本部営業開発部次長の白鳥裕一様(写真奥右)。
 深澤会長によると、オフィスや家庭のイスは、「誰の席」というように座る人が決まっているのに、パブリックスペースに設置するイスは、おばあさんが座り、子どもが座り、若者が座りと、様々な人たちが座る。
そんな様々な人たちに、快適な空間を提供できるイス作りはとても楽しく刺激的であるという。
 そんな刺激的な一例として・・・。200x年、某スタジアムでサッカー(Jリーグ)の試合中、あろうことか納入したイスが何脚か壊れるという事態が起こった。コトブキとしては大問題である。強度計算始め、設計施工には十分の配慮をしていた。そこで、コトブキ独自の懸命の事故調査が進められた。屋根裏にはビデオを据え付け、スタッフも試合があるごとに通って、とにかく一年間観客の動向を観察し続けた。そこで分かったのは、チョット考えられないようなサポーターの行動。イスの上に立ってジャンプするやら踊るやらは日常茶飯事。中には、階上の手すりにロープのようなものをぶら下げ、それにつかまってターザンもどきにイスからイスへと飛び移るようなサポーターも・・・。さすがにそんな衝撃は想定外。状態を知った技術スタッフは、あきれながらも、自らイスの上で踊ったり飛び跳ねたり蹴飛ばしたり・・・。こんな経験がコトブキのイスをさらに進化させているのだ。
 因みに2002年、日本と韓国で共催されたサッカーの祭典、ワールドカップのために、全国で10のスタジアムが新設されたが、そのうち8スタジアムのイスをコトブキが納入したという。


■スポーツ施設納入例
 埼玉スタジアム2002
 新潟スタジアムビッグスワン
 札幌ドーム
        (写真上から)





イスのコトブキから新たな分野へ…
 スタジアム等の所管は公園課であるということをご存知だろうか。このスタジアムが公園課ということから、イスのコトブキは新たな分野に進出していくこととなる。それが、ベンチやバスシェルター、公園遊具のようなストリートファニチュアの分野である。こうした分野も、昭和50年頃までは建築家がデザインしていたが、以降社内デザイン力を強化し、これまでにない斬新なデザイン・機能のものを提供し続けている。
 また、こうしたストリートファニチュアの発展と共に、コトブキのもう一つの顔となったのがパブリックアートの分野。1983年、人々にアート作品を通じてより豊かな文化と生活環境に貢献する事を目的として、コトブキのタウンアート事業部が発足した。公共空間へのアート作品の調査・分析から企画・実施・施工及びメンテナンスの業務を一貫して行ない、 専門知識と豊富な経験を持って、都市景観・建築計画などの街づくりの分野にわたり携わり、 現在までに1,500件に及ぶパブリックアート事業に関与し、総合的な管理能力と調整力は広く評価を得ている。


イスのコトブキから新たな分野へ…
 最後に深澤会長はこうお話をしてくださった。
 「パブリックとは、政府が金を出すからなのか、政府が管理するからなのか、多くの人が利用するからなのか、多くの人が参加するからなのか、社会のためだからか、人々のただからめか・・・。こうしたことをきちんと整理して、自分の視点をしっかりと持っていなくては、確かなモノづくりはできない。日本では、まだまだファインアート至上主義であり、パブリックアートを一段低く見る傾向があるが、世界の動向は既に変わってきている。aacaがこのパブリックアートの普及を標榜するのであれば、いわゆる学会との連携が不可欠だろう。」。
 今年20周年を迎えたaaca。そのこれからの活動のあり方に、大きなヒントを与えてくれる言葉ではないだろうか。


コトブキのショールームは浜松町のアミューズメントスペース
浜松町のビルは各階がショールーム。白鳥さんが、丁寧に案内してくださいました。
その様子はこちらから → クリック

快適性の追求は「おやすみなさい」にまで・・・。
ショールームの中で、みんなが「オッ」と思ったのがスリープカプセル。いわゆるカプセルホテルの”個室”である。コトブキの得意分野の一つ、FRP製品開発のノウハウを投入し、世界初のカプセルホテル「カプセルイン大阪」への納入以来、狭いスペースに最大限の快適性をもたせたスリープカプセルを開発し続けている。

オペラや能楽に字幕があったなら・・・。
“オペラ”、”能楽”等々、一度は舞台で実際に鑑賞してみたいけど、言葉が良く分からないから・・・と、二の足を踏んでいる方も多いのではないだろうか。そんな悩みを解消するために、コトブキは多言語配信システムを開発したフィガロ社と提携。劇場のイスの背中に組み込まれたディスプレイに、最大七ヶ国語の字幕言語を流すことができるため、舞台芸術の楽しみ方が大きく広がってきた。






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